相愛smell

9話
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貴方side





駆け込んだ公園には、夕方なのに誰もいなくて。





しゃがんだまま、空を見上げたら
一面が明るいオレンジ色で、私の心とは随分違って、見るのが辛くなった。









また、しゃがんだまま俯いて
空と違って、暗い足元を見つめた。






..........胸が、痛い。






心がチクチク、ズキズキする。






こんな感情は、知らない。



知りたくなかった。



恋することは、もっとふわふわしてて
毎日が楽しくなるような。

..........そんなものだと、思ってた。






けど、実際..........そんなのは一瞬だ。






こんなに辛いなら、痛いなら...知らなきゃよかった。












「......こんな個性、無ければよかった。」













無ければ.......無ければ...。





楽だったけど、この個性が無かったら

..................轟くんにも、会えてなかった。













結局、全てが..........運命だ。













「.............本当.......らしく、ない......。」













ポタポタと、地面に雫が落ちて
ぼやける視界で、自分が泣いていることに気がついた。



..........泣くのなんて、久しぶり。








地面に落ちる雫が増えて
頬だけじゃなくて、髪も肩も、濡れていく。




そういえば、母さんが朝
雨が降るかもしれないって...言ってた。




ぼんやりと思いだしながら
リュックの中の折りたたみカサを出すこともせず

全部、全部。....流れてしまえばいい。

と思っていた私に。



















轟「..................香野...。」



















やさしく名前を呼んで
カサを差してくれたその人に。




泣いてる顔を見せたくなくて
私は、顔を上げることが出来なかった。
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