相愛smell

4話
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貴方side



月曜の、朝。









「......本当に、1本遅いのにしてしまった。」









後悔こそはしてないんだけど
本当にこれでよかったのか、自分の選択が不安になる。




1本遅らせたこの時間は
サラリーマンの人よりも学生の方が多く
轟くんを見つけるのは、困難なのでは...と思ったけど







「...........あ...!」







あっさり、本当にあっさり見つかった。





轟くんを探していることを“求めている”と判断したのか
香りがする方へ向かうと、そこに彼はいた。


...使い方1つで、この個性...相当便利だ。








さり気なく轟くんに向かって歩いていこうと考えていたのに









轟「......!!.........香野!」









向こうがすぐに気づいて、こっちに来てくれた。




「......お、おはよう。」







轟「ああ、おはよう。

たしか、1本前の電車じゃなかったか?」










「......ぁ...えっと......。

...時間に余裕が持てたから、遅らせることに...。」











.............心の余裕は、さっぱり無いんですが。






即席の理由にしては、なかなかいい出来じゃないかと思う。


......正直、理由でもなんでもないんだけど。








私が1本遅らせたこの電車で、これから通学することを知ると

















轟「...そうか!

...なら、方向も同じだし...途中までは一緒だな。」
















と、解釈が間違ってなければ嬉しそうに言った。







「.........そ、そういうことになる...かな。」







外見では冷静に保ちつつも
内心の自分が、轟くんの笑顔にしてやられてしまった。



......途中まで“一緒”ってことは、なに。










......途中まで、一緒にいてもいいってことですか。









..........じゃなかったら、どういう意味になるんだろう。



...分からないし、とりあえず何か言われるまでは
一緒にいてみよう。











さっきから、かなり明るめの表情の轟くん。




目が合うと、小さく笑って首を傾げる。

















..........いろいろ誤解しちゃうから、その笑顔はやめてほしい。





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