コースター//(カレー)

□[1. 天使と偽物]
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 渡り鳥が鳴いている。どこまでも青い空、白い雲、絵の具を溶かしたように街を取り囲む真っ青な海……



見慣れている住人たちには、それらはなんてことのない世界であり、時間が止まったように感じるのは、あくまでも観光客くらいだろう。
とにかく、そのくらい、ここは人工物と自然が共存する、のんびりした街だ。

そののんびりした街とは裏腹に、どこかのスーパーの倉庫を抜け、そこから細い路地に入りつつ、僕は走っていた。




道の途中で真っ白な猫に合う。
 獣は苦手だったけれど、獣のような人間にこれから会わないとならないと思うと、自然と声をかけてしまう。

でも彼女(推測)は黙ってこちらを一別してから、ブロック塀に座って顔をぐしぐしと擦り始める。
まあ、いいや。
猫だってどうでもいい人間に媚びないだろう。
諦めて灰色の塀の立ち並ぶ住宅街というか、コンクリートの世界を抜ける。
 やがて視界がぱあっと開けて、低い塀と、その向こうの青い海が広がって見えてきた。
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