コースター//(カレー)
□[8.白髪連合ですか?]
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2019.10/12.16:12
「絵の並びが確かに変だね」
縞はしばらく作品を見終えてから呟いた。
「一見何の変鉄もないならびだけれど、1から10までが、不思議と噛み合わない。展示の位置も間違ってないし名前も間違ってない、天地も違わないのに、圧倒的に間違っているみたい」
「でしょう?」
僕は頷いた。
「これに警備員が気が付かないなんて、思わなかったんだよな」
そういえば高齢者さんが学校のことを聞くと怒り出すのも不思議だ。
「ユマスタレティカ・インデラトミリュア、って感じか」
「たぶんね」
この状態がユマスタレティカなのかは僕にも図りかねるけれど。彼女はすっ、と壁をなぞった。
「うーん……見る限りでは絵を新たに移動させたというわけでは、なさそうですね」
高齢者さんが、自分の絵かどうかわからなくなるようなことがあるのだとしたらこのへんにヒントがありそうだけどな。絵や彫刻に限っていえば至って普通のものたちだったし、どちらかといえば穏やかな雰囲気のものも半数だったためジュリエットの酷薄はやけに際立っていた。
「壁、か」
僕は、壁をそっと触れた。
「ミュイニみたいな壁」
穏やかな光がフロアを照らしている。静かな時間のなかでもなぜか動悸がした。落ち着かなくてはならないのに落ち着かない。
――幻想のオアシスは私の隠しているものだ。
――暴けたら、やろう。
ずきっ、と頭痛がした。
(幻想のオアシス、って、なんなんだ。だから……)
なにか、大事なものを忘れてる気がする。もしも、幻想のオアシスを見つけたら……
「あ、どうかした?」
縞がこっちを見る。くらりと身体が揺れたが、どうにか持ち直す。
「いや、あの爆弾探しを思い出してたんだ。危ないのは好きじゃないけど、パズルは好きだな」
「レイちゃんは推理パズル小説の主人公らしくていいよね」
「なんだそりゃ」
「……ふふ」