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□この世界のどこにも
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珍しく晴れたロンドンの街に少女の軽やかな足音が響いた。
ここに座ろう、と恋人に微笑みかけカフェのテラス席に座る。
「はー、いっぱい歩いて疲れたあ」
「そんなに急がずとも何も逃げん。ユリア」
「だって見るもの全てが新鮮で楽しいもの」
そう言ってユリアは楽しそうに笑った。
運ばれてきた紅茶とケーキにまた目を輝かせる。
恋人のそんな様子にスネイプも思わず微笑んだ。
今日からホグワーツは夏休み。
家に帰る前にマグルの世界でデートしよう、とユリアがねだったのだ。
「キングズ・クロス駅以外は出掛けたことが無いとはな」
「パパとママが過保護なんだもの」
「その反動でこんなおてんば娘になったのだな」
何ですって、と声を低くしてスネイプを睨む。
その唇の端に生クリームが付いていることに気付き、スネイプはまた笑った。
そして指を伸ばしそれを拭ってやる。
「ちょ、ちょっと。自分で出来るってば…」
「恥ずかしがらんでもいいだろう。知り合いもおらん」
教師と生徒。いつも誰かの目を気にしていた。
それが今日は誰も知り合いがいない。
恋人たちは微笑み合い、テーブルの上で手を重ねた。