パラレルワールド

□第4話
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まいやんの協力を得て、私は乃木坂としての活動をしていた。

たまたま、今週は歌とソロの仕事が無かったので、何とかこなしている。

今は、レッスン場で自主練をしている。
先日、まいやんに教わった新曲の振り付けを確認していた。

(名前に会いたいなあ。でも、何か理由作らないと会いに行ったら心配するよなあ)

数日、私は名前と会えないでいた。
まいやんにも注意されたように頻繁に会うものではないのは分かっている。
違う人とはいえ、私にとっては恋人であり、この世界での私の最大の理解者だ。
会いたいものは、会いたい。


「あ、なぁちゃん!!自主練してるの?」
「あ、生駒ちゃん。せやねん。ちょっと上手くいかんくって」
「私も〜」

生駒里奈ちゃんがレッスン場に入ってきた。
生駒ちゃんは、私の正体を知らない。

そういうと彼女も自主練を始めた。

(やっぱり、プロって凄いなあ)

思わず、生駒ちゃんのダンスに見入ってしまう。

それに気が付いた、生駒ちゃんがこっちをみて声をかけた。

「なぁちゃん、どうしたの??」
「ううん、なんでもない。ウチも自主練続けるわ」

そうして、二人で自主練を続けた。
一時間半後に私たちは練習を終えて、レッスン場を出た。
その時、生駒ちゃんから私に声をかけた。

「なぁちゃん、この後ご飯いかない?」
「え?」
「あ、もしかして何か予定があった?」
「いや、別に大丈夫だよ」

(まいやんからもあまり怪しまれないようにメンバーを避けるなって言われてるし)

私は、生駒ちゃんと食事に行った。
ボロを出すわけにはいかないので、生駒ちゃんの話に相槌を打つ形が多い会話になってしまった。

そう、私はプライベートでもこっちの西野七瀬を演じないといけない。
実はちょっとしたストレス。
まいやんの前では本当の自分を出してもいいかもしれないが、やはりこっちの西野七瀬を意識してしまう。

本当の自分を出せるのは名前の前だけだった。

「あ、なぁちゃんがモデルやってる雑誌見たよ。可愛かった!!」
「ホンマに?ありがとう」

(そっか、こっちのななはモデルもやってるんだっけ)

「次の撮影とか決まってるの?」
「え?どうやろ?わからへん」

(そっか、モデルとかグラビアの仕事もあるんだ。出来るかな?あ、そうや)

私は、こっちのななのことを知る方法と名前に会えるアイディアが思いついた。

「なぁちゃん、じゃあね」
「うん、またご飯行こうな」

私は、生駒ちゃんと別れた後に名前にLINEした。



仕事から帰る途中にLINEで七瀬ちゃんから連絡があった。

「こっちのななを知るために、ななが載ってる雑誌を買って来てほしい。さすがに自分が載ってる雑誌を買うのは恥ずかしい。できる限り沢山買ってきて。後で家まで読みに行くから」

俺は帰る途中で大きな本屋に立ち寄った。

雑誌コーナーにつくと、七瀬ちゃんが載っている雑誌を片っ端から手に取る。
そして・・・・・

(そっか、西野七瀬ってファッション誌のモデルもやってるのか)

ちょっとハードルが高いがこれも七瀬ちゃんのためだと自分に言い聞かせて、女性誌も手に取った。

(この雑誌だけ見るとコアな西野七瀬ファンだな)

自分が持っている雑誌の量と種類を見てそう考えてしまった。
レジのお姉さんが少し変な目で見たような気がしたが、気にしないことにした。
うん、決してやましいことはしていない。
女性ファッション雑誌持ってるけど・・・・・

『雑誌買ったよ。じゃあ待ってるね』
と七瀬ちゃんにLINEした。


家に帰って、しばらくすると七瀬ちゃんがやってきた。

「買ってきてくれた本ってどれ?」
『そこにあるよ』
「わ、結構あるんやな。女性ファッション誌もあるやん。恥ずかしかったやろ?w」
『ちょっと、レジのお姉さんの視線が痛かったw』
「そうやったん?ありがとw」

そういうと七瀬ちゃんは雑誌を読み始めた。

『はい』

俺は、温かい紅茶を入れて七瀬ちゃんに出した。

「ありがと。たまには気がきくやん」
『たまにはって酷いなw』
「でも、普段はこういうのせえへんやろ?」
『なんで分かるの?』
「だって、名前の彼女を3年以上やってますからw」

そういうと七瀬ちゃんは微笑んで紅茶を飲みながら再び雑誌を読み始めた。

「インタビュー記事とかありがたいわ」
『そうなの?』
「こっちのななの考えが少しでもわかるやん」
『あー、なるほど。そうだね』

インタビュー記事を熱心に読む七瀬ちゃん。

(七瀬ちゃん頑張ってるなあ)

そんな彼女を助けてあげたいという気持ちがより一層強くなるのを感じた。

「おー、モデルの写真。こんな感じかな?なあ、名前どう?」
女性ファッション詩のモデルの写真を見て同じポーズを真似て聞いてきた。

『おー、一緒、一緒。まったく同じ』

そんな感じで彼女と雑誌のポーズを真似て雑誌を一緒に見て時間が過ぎていく。

「やっぱ、難しいなあ。ウチに出来るんかなあ?」
『大丈夫だよ』
「そうはいっても、グラビアの写真とか恥ずかしいし。あ、こういうのならすぐに出来るのに」

そういって、七瀬ちゃんが手に取ったのは男性誌。
そこには、「西野七瀬が恋人だったら」というシチュエーションの写真が載っていた。

「これやったら、いつも名前にやってるようにすればいいし」
『そ、そうだね』
そういって、写真の中にあるかわいい仕草を自然とやる七瀬ちゃん

七瀬ちゃんが恋人である、向こうの世界の俺が心底羨ましかった。

そして・・・・・

「・・・・・ん」
写真にあった、キス顔を真似てこっちを見て目を閉じる七瀬ちゃん
『七瀬ちゃん?さすがにそこまでやらなくても・・・・・七瀬ちゃん?』
声をかけるが七瀬ちゃんは目を閉じたまま。

(これって・・・・・もしかしていいの?)

彼女には恋人がいる。
まあ、向こうの世界の俺だけど。

でも、こんなことをされて我慢できる訳がない。

意を決して俺は彼女に顔を近づけた。

そして・・・・・






キスする前にチャイムが鳴った。

『「あっ」』

思わず、ドアを二人で見てしまう。


「・・・・誰か来たみたいやね」
『そ、そうだね。ちょっと見てくる』
「うん」


『白石さん?』
「なぁちゃん、いる?あ、やっぱりここにいた」
ドアを外にはまいやんがいた。


「まいやん、どうしたん?」
「どうしたも、こうしたもないよ。携帯に電話しても出ないし」
「あ、ごめん気が付かなかった」
「まあ、こんなことだろうと思ったけど。あ、名前君、なぁちゃんに変なことしてないよね?」

先ほどのシチュエーションが頭をよぎる。

『してない、してない』
「そ、そう、そんなことないよ」
「本当に?なんか、怪しいなあ」

女の勘はするどい
未遂だからセーフのはず。
でも、惜しかった。


「で、二人して私の電話を無視して何してたの?」
「あ、こっちのななの載ってる雑誌を名前に買ってきてもらって読んでた。ポーズとかインタビュー記事みて、こっちのななの研究」
「なんで、名前君に買ってきてもらったの?」
「だって、自分の載ってる雑誌を本屋さんで買うのは恥ずかしいやん」
『そうそう、だからここで二人で読んでたんだ』


「・・・・・ネットで買えばよくない?」
まいやんの的確なツッコミ

あ・・・・・確かに

『そっか、ネットで買えばよかったね』
そう言って七瀬ちゃんを見ると彼女は少し恥ずかしそうに下を向いていた。
どうしたんだろう?

何かに気付いたまいやんが一言
「なぁちゃん、もしかしてワザと?」

え?

「ふふっ、バレた?w」
そういって、ちょっと笑って七瀬ちゃんが答える。

『ん?どういうこと?』
「名前君、鈍いね。本当になぁちゃんの彼氏?」

だから、それは俺であって俺じゃない。

「名前君に会いたいから、君に買ってきて貰ったんだよ」
『え?あー』

何となく状況が分かった。

「でも、まあインタビュー記事を読んでいるのは正解かもね。色々と聞かれるだろうし」
「聞かれるって、誰に?」
「ん?ファンの人」
「ファンの人に?どこで?」
「そのことを話そうと思ったのよ。なぁちゃん、来週握手会あるからね。」

「え?握手会? 来週握手会あるの??」
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