パラレルワールド(橋本奈々未バージョン)

□第3話
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こっちの世界に来て、1週間ちょっと経った。

今日はラジオの収録。
卒業するまでのテレビ番組の収録はどうやら私がこっちにくるまでに終わってたみたいで、助かった。
といっても、当然ラジオに出たこと無いので、内心ガチガチに緊張していたのだが・・・・・

卒業間近なので、当然その話が中心。
インタビューや白石さん、じゃない、しーちゃんとなぁちゃんから聞いた話は頭に入ってる。
後は、乃木坂の橋本奈々未になりきったつもりで、言葉を選び語る。

バレないか心配になったのだが、幸いバレてないみたい。
でも、皆を騙してる気分になって、ちょっと罪悪感


バースデイライブと橋本奈々未の卒業ライブのレッスンも始まった。
「ここでは・・・・・」
演出家の先生から演出の説明、

「橋本!!なにやってんだ!!お前の卒業コンサートだろ!? しっかり決めろ!!」
「すみません!」
先生の指導に熱が入る。


はっきり言って、何で私が?と思う時がある。
でも、それは何とか橋本奈々未を最高の形で送り出そうとする関係者の気持ちの表れなんだろう。

「ななみん、それは?」
しーちゃんから声を掛けられる。
「ああ、ICレコーダ。後で説明とか注意されたことを聞き直して纏めようと思って。先生には内緒ね?」
「うん、分かった」
万が一に備えてやるべきことは沢山ある。

また数日が経った。

私が載る雑誌が発売される。
実際には撮影はこっちの私が臨んだもの。

それでも店頭に普段は鏡で見る自分の顔が雑誌の表紙となって並んでいると何か不思議な気分。




写真集が私の誕生日、すなわち卒業の日に発売されるらしい。
そのPRイベントにも参加。

一生懸命アピール

でも、疑問

何で卒業の日に発売なんだろう?

これは名前にも聞いてみた。

『俺にもわからないw』
「だよね、売れても今後の仕事に関係ないのにね」
『ファンのため?』
「卒業したら、一般人になるのに? お互い辛くない?」
『確かに、そうも思えるね』
「芸能界ってよくわかんない」
『俺は奈々未ちゃんみたいに覗いたこともないから、もっと分からないよw』
名前とこういう他愛もない会話をしている時が一番落ち着く。


乃木坂46の橋本奈々未としての生活は忙しい。
メディア向けのお仕事、レッスンに次ぐレッスン。

はっきり言って、ストレスが溜まる。

こういう時は、名前に会う。



奈々未ちゃんが家に遊びに来た。
ライブに向けてのレッスンが忙しいらしい。

「つ〜か〜れ〜た〜」
そう言って、俺の部屋に入るなり、俺のベッドにダイブ。
『ちょっと、大丈夫?』
「慣れないことしてるし、レッスン中も乃木坂の私を演じないといけないんだもん」
『確かに大変だ』
「でしょ? だから、ここにいる時は好きにさせてよ〜」
『それはいいけど』
「あ、名前、脚をマッサージして?」
『あ、脚を!?』
「は〜や〜く〜」
ベッドの上にうつ伏せの状態で脚をバタバタさせる奈々未ちゃん

『う、うん』

橋本奈々未の脚・・・・・
よく考えると目の前にとんでもないものが横たわってる。

『じゃ、じゃあ』
俺は、踵のほうから脚をもむ。

「気持ちいい〜、そのまま上の方も」

奈々未ちゃんの言葉に従い、揉む位置を徐々に移動させる。

「バカ、そこはお尻」
うつ伏せの状態でこっちに振り向いて奈々未ちゃんに言われる。
無我夢中でマッサージしてたら、お尻に到達していた。

『ご、ごめん』
「なに?私のお尻触りたいの?」
ちょっと、意地悪な笑顔で俺に話しかける奈々未ちゃん。

『そ、それは』
「そんなとこ、揉まれると私も変な気分に・・・・・」

そこでチャイムが鳴る

『あ、ちょ、ちょっと行ってくるね』
「あっ、もう!!」
俺は玄関に向かう、その後姿にちょっと残念そうな奈々未ちゃん

「こんばんは〜って、ななみん何してるの?」
「ほんまやw」
「ん?名前にお尻揉まれてた」
「は?」
「なにしてるの?」

まいやんと七瀬ちゃんから厳しい視線

『いや、誤解だって』
「別に私は名前だったら何されても構わないよ。」
『奈々未ちゃん!?』
「ななみん!?」
「どないしたん!?」


「だって、私、名前のこと愛してるから」
奈々未ちゃんがそんなことを言い出す。

『え?』
「な、何を言うてるん?」
「そうだよ、この人じゃないでしょ? ななみんの恋人は」

俺たちの反応を見て、ベッドにうつ伏せのまま、プイと顔を反対方向に向ける奈々未ちゃん

「ほら、名前君も自分で説明して」
「せやで、名前君がハッキリしないから」
『え? あ、うん』

でも、ふと奈々未ちゃんをみると肩が震えている。

「ななみん、泣き出したじゃん。 名前君なんとかしなさいよ」
「彼氏やろ?」

ねえ、二人ともさっきと全く違うこと言ってない?

『奈々未ちゃん?』



「・・・・・ぷっ・・・・・くくくっ」

『・・・・・??』
「ななみん??」
「どないしたん??」

「あ〜、もうだめw」
脚をバタバタさせる奈々未ちゃん

そして、こっちを再び見る

「さっきの・・・・・3人の・・・・・顔w」
笑いながら話す奈々未ちゃん

「ちょっと!?」
「ななみん!?」

「名前は、口開けてキョトンとしてるし、二人は焦ってるしw ねえ、二人とも私に名前を取られるのそんなに嫌?w」


「そ、そんなんちゃうし!」
「そうよ!」
『どういうこと?』


「まあ、いいけどw 二人ともこの人鈍感だから、もっと素直にねw」
悪戯っぽく笑う奈々未ちゃんとムスッとするまいやんと七瀬ちゃん、そしてよく分かってない俺だった




朝になって、私は目が覚めた。
スマホを見る。

朝起きて、スマホを見るのが私の最近の日課
乃木坂の公式ページを確認し、自分の画像を見つめる

そして、しーちゃん、なぁちゃん、名前のグループLINEに連絡

「今日も元の世界に戻っていません」


スマホの日付を確認

2017年2月20日

私の24歳の誕生日

そして・・・・・・

「結局、私で卒業ライブをするのか・・・・・」

私は、元の世界に戻れず、そのまま乃木坂46卒業の日を迎えた。



さいたまスーパーアリーナ

リハーサルから皆の気合の入れ方が違う。

私はなんとかリハーサルをこなす。


橋本奈々未の卒業ライブの開演

ステージに立って、客席を見ると満員のファン

私は、その光景、熱量、空気に圧倒された

想像していたものを遥かに超える景色


数曲、歌って一度舞台裏へ

「やっばい、ミスった!」
舞台裏で焦るななみん

「大丈夫、あれぐらいどうってことないって」
「落ち着いて」
「で、でも」

ややパニック状態のななみんとそれを落ち着かせようとする、まいやんと七瀬ちゃん

「一度落ち着いて?」
「深呼吸してみよう?」
「う、うん」

目も閉じて深呼吸をする、ななみん

再び、目を開ける

「・・・・・あれ?・・・ここは・・・ライブ・・・・・会場?」
目を開けたななみんは周りの風景を不思議そうに見回す


「ななみん、どないしたん?」
「大丈夫?」
さっきまでと少し様子の違うななみんに話しかける二人

「あ、しーちゃんになぁちゃん・・・・・ここって・・・・・?」
ななみんの様子はやっぱりおかしい

まいやんと七瀬ちゃんの二人にあることが思い浮かぶ

「ななみん? まさか・・・・・」
「もしかして・・・・・」


「あ、その様子だと二人は事情を知ってるの? ただいま、なんか戻ってこれたみたい」


「うそやろ!?」
「このタイミングで!?」
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