パラレルワールド(橋本奈々未バージョン)

□第2話
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「・・・・・私がアイドル?」

テレビ画面を見つめたまま、信じられないという表情の奈々未ちゃん。


「どうやったら、戻れるの?」
『実はそれがよく分からないんだ』
「ウチも同じように違う世界に行ったけど、ある日突然こっちの世界に戻ってこれたから」
「そう遠くないうちに戻れるとは思う」
「そうなんだ・・・・・」


「ちなみにさ、名前と私ってこっちの世界ではどんな関係?」
『全くの赤の他人・・・・・』
「会ったこともない?」
『うん、橋本奈々未は俺にとっては、テレビの向こうの存在』
「なにそれ」
ちょっと寂しそうな表情をする奈々未ちゃん

「それで、混乱しているところ本当に申し訳なんだけど、ななみんにお願いがあるんだ」
まいやんがななみんに語り掛ける

「そのさっきから言ってる、ななみんって?」
「あ、こっちでのあなたのニックネーム」
「そうなんだ・・・・・本当に何から何まで私が知らないことばっかりなんだね。で、なに?お願いって」
「こっちの世界に居る間は、ななみんを演じて欲しいの」
「え?無理でしょ?私にアイドルの代わりをやれっての?」
「そこをなんとか!」
「突然、なんなの?」
「来月、ななみんは乃木坂を卒業するんよ」
「来月?」
「うん、来月の誕生日」
「私の?」
「そう」


「名前はどう思ってるの? この話」
『俺!?』
突然話を振られる。

『こっちの奈々未ちゃんは、アイドルとして5年半懸命に努力してきた。 もちろん目の前の奈々未ちゃんも本来の世界で努力してきたと思うよ』
「まあ、そりゃあね」
『メンバーやファンがアイドルを来月送り出そうとしていて、出来ることなら綺麗な形で終わらせてあげたい』
「そのために私が苦労しろと?」
『だから、嫌なら嫌って言っていいと思う』
本来、言ってはいけないかもしれない言葉を俺は口にした。

「名前君!?」
『まいやん、七瀬ちゃん、仕方ないよ。こればっかりは。ダメだったら、3人で何か方法を考えよう?』
俺の言葉に驚く二人を宥める。


「名前は、何でそこまで乃木坂のために行動できるの?」
『うーん、たまたま手助けできるポジションにいたから?』
「それだけ?」
『それだけって訳でもないけど、助けが必要な人がいて、自分に手助けできるのならしてあげたい』
「ほんっとに、相変わらずお人好しだね」
『・・・・・たまに言われます』
「まあ、そこが好きなところの一つなんだけど」

少し考え込む奈々未ちゃん

「これだけ確認させて」
奈々未ちゃんは俺たち3人を見つめる。


「今、あなたたちは助けが必要で、それは私にしかできない、そういうこと?」
と俺たちに尋ねた。

「うん、あなたの助けが必要なの」
とまいやんが答える。

しばしの沈黙

「分かったわよ、やるわよ。しょうがないなあ」

「ホンマに!?」
「ありがとう!!」
「ちょ、ちょっと!?」
奈々未ちゃんの承諾の回答に喜びのあまり奈々未ちゃんに抱き着く七瀬ちゃんとまいやん


「あれ?ちょっと待って?」
突然大きな声を出す奈々未ちゃん。

『何、どうしたの?』
「もしかして、2月20日までに戻れなかったら、私で卒業コンサートするの?」

「・・・・・そうなるな」
「そうなるね」
『確かに』
「私、素人なんだけど・・・・・」

「大丈夫、ウチらが特訓したる」
「前も素人のなぁちゃんで何とかしたから、大丈夫・・・・・多分」


俺たち3人が奈々未ちゃんを見つめる

「何よ、その不安そうな・・・・・。やるわよ。引き受けたんだから。」




数日後、奈々未ちゃんは俺の家に遊びに来ていた。

連日、まいやんと七瀬ちゃんにしごかれているらしい。
今日もその特訓の終わりに俺の家に来た

「あ〜、疲れた〜」
『お疲れ様』
「あの二人、可愛い顔しているのにものすごい厳しいんだから、大変だよ」
『そうなんだw』
「あ、今笑ったでしょ?」
『ごめん、ごめんw でも、そんなに凄いんだ?』
「鬼よ、鬼!w」
そういって、両手で角を作ってこっちにアピールする奈々未ちゃん

しばらくして、バッグからメモ帳とノートを取り出す
『それは?』
「二人に教えてもらったことをその時メモして、後でノートに写すの」
そういって、メモをノートに写し出す。

『何か受験勉強みたいだねw』
「似たようなものよ、5年半を1か月ちょっとで何とか形にしようってんだから」
『それは?』
「あ〜、これは歌割りのメモ。そりゃそうよね。グループで歌うんだもん。カラオケじゃないんだし」
『やることいっぱいだね』
「私の苦労分かってくれた?」
『うん』
「じゃあさ、ご褒美頂戴?」
『ご褒美?』

俺は彼女の言葉を聞き、彼女を見つめる。
ご褒美って何をあげたらいいんだろう?

そう考えていると彼女が顔を近づけてきて・・・・・

唇と唇が重なった。

奈々未ちゃんの柔らかい唇の感覚が伝わる。


「よし、これでもう少し頑張れそう」
奈々未ちゃんは再びメモ帳とノートに向かう

『え?あ、うん』

こうして夜は更けていった。
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