パラレルワールド(AnotherWorld)

□第7話
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「どうしよう?」
七瀬が不安そうな顔でこっちを見る。
『断ったんじゃないの?』
「連絡先は教えてへんけど・・・・・優花がなんて説明したか知らんし」

確かに

まだ遠いが少しづつ、男性幹事との距離が近づく

『七瀬、右手貸して』
「え?」
俺はそう言うと、七瀬の右手を自分の左手で握った。
指を絡める握り方。

いわゆる恋人つなぎというやつだ

「え?え?」
『これで察してくれないかなあ、駄目だったら一緒に謝るよw』

流石にこんな大勢の人の前で喧嘩沙汰にはならないだろうし。

しかし
「名前君、手離して」
と小さな声で七瀬が言った。

『え?でも』
「いいから!」
小さく、でも力強く七瀬は言う。

『ごめん、そんなに嫌だった?』
俺は慌てて手を放した。


すると七瀬が彼女の右腕を俺の左腕に絡ませてきた。
いわゆる腕を組んでいる状態。
そして頭を肩あたりに当てる。

『七瀬!?』
「こっちの方がクリスマスのカップルっぽい。行こう?」
『う、うん』

こっちの七瀬も目の前の七瀬もこういうのは人前でやるのは恥ずかしがるタイプだ。
だから、いつもとは違う少し大胆な行動に内心ドキドキしていた。



私は、名前君と腕を組みながら歩いた。

男性幹事が近づく

彼と視線が交錯する。

彼は私に気が付いたみたいだった。

しかし、そのまま何事もなく通り過ぎた。

「ねえ、大丈夫かな」
『うん、向こうの方に歩いて行ったよ』
「そっか」
何故か分からないけど、名前君と組んでいる腕に力を入れてさっきよりちょっと密着する。

『もう、見えなくなったけど?』
「他に知り合いが見てるかも知らんし、このままレストランまで行こう?」
肩越しに名前君を見つめてそう言った。

『う、うん』


レストランは、ホテルにある少しお値段が高めのレストラン

お酒も食事も美味しかった。

『七瀬、これ』
「え?なに?」
『クリスマスプレゼント』
「ウチに?ホンマに??」
『うん』
「開けてええ?」
『どうぞw』

もらった箱を開けるとそこにはネックレスが入っていた。

「かわいい、ありがとう」
これは私を頭に浮かべて選んでくれたんかな?
それともこっちのななを?

聞きたい気持ちはあったけど、それは無粋というものだ。

「実はな、ウチもプレゼント用意してん」
『え?そうなの?』
「うん」
そう言って、私は用意したプレゼントを彼に渡した。

『開けていい?』
「うん」

そこには腕時計が入っていた。
まあ、今の私は女子大生なのであまり高くないけど

『ありがとう、大切にするよ』

私たちは、お互いのプレゼントを身に着けて、レストランを出た。

『どうする?どこか行きたいところある?』
「うーん、どうしようかな。あ、イルミネーション見たい」
『わかった、見に行こう』

私たちはイルミネーションを見にスポットへ
そこに着くと

「うわあ、やっぱ多いなあ」
『そうだね、今日が本番みたいなもんだしねw』

大勢の人がイルミネーションを見るために来ていて、ごった返していた

『行こう?』
彼が進む
「あ、待って」
そういうと私は再び彼の腕を組んだ

『ん?』
「人多いし、はぐれてしまうかもしれんやん?」
『そ、そうだね』

そうやって、私たちはクリスマスのイルミネーションを楽しんだ。
今までとは少し違ったクリスマスを過ごした。


大晦日

結局、今年はこっちの世界で過ごして、年を越すことになりそうだ。

私は家で紅白歌合戦を見ていた。
テレビに映るのは乃木坂46

今年はテレビで見る側。
不思議というか複雑な気分やけど、しょうがない。
でも、歌いたいっていう気持ちはまだ心に残っている。

向こうに行ったななは、紅白で歌ってるんやろうか?
アイドル生活をどんな気持ちで過ごしてるんだろう?
一度聞いてみたいな

そんなことを考えていた。



そして、年が明けた。

「あけましておめでとうございます」
『あけましておめでとうございます』

一緒にテレビを見ていた名前君と新年の挨拶をする。
新しい年は、こっちの女子大生として迎えた。

初詣に近所の神社へ

大きな神社じゃないけど、やっぱり人が多い。
変装しなくてもいいのが、ちょっと嬉しい。

お願い事は、やっぱり

元の世界にもどれますように

この世界も居心地はいいんだけど、本当にここに居るべき人は私じゃないから



1月のある日
『七瀬』
「なに?」
『乃木坂のバースデイライブ最終日のチケット手に入ったんだけど、行く?』
「え?ホンマに??行く!行く!!」
『じゃあ、一緒に行こう』
「チケット見せて、最前列やん!? よく取れたね」
『俺も驚いたw 今年の運を全部ここで使ったのかな、後は不幸だけだったりしてw』
「もう、あんまり暗いこと言わんとってよw」

こっちの乃木坂のライブを生で見れる。
楽しみが一つ増えた。



1月下旬

乃木坂の冠番組で新曲の選抜が発表されていた。

(センターは白石麻衣)

「そっか、センターはまいやんかー」
テレビを見ながらそう言葉にする

『七瀬、向こうではセンターとかやったことあるんだよね?』
「うん、ありがたいことにね」
『やっぱ、選抜発表って何度やっても緊張する?』
「そりゃもう、緊張ってレベルでは片付かんで?」
『選抜常連だったんでしょ?でも、慣れないんだ?』
「一生、慣れることはないと思う」

でも・・・・・選ばれて、また歌いたい
そう思いながらテレビを見つめた。
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