パラレルワールド(AnotherWorld)

□第2話
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わからん、全く意味がわからん。

私は、ただただ混乱していた。

ななと同棲しているという名前と呼ばれる男の人
ななの親友と名乗る優花という女の人

私は、思わずこんな言葉を口にした。
「なあ、ウチって西野七瀬だよね?」
『そうだよ?本当にどうした?』

私は、ふと鏡に目をやる。
そこに映っているのは、いつも見慣れた私の顔。

「ウチ、乃木坂で頑張ってきてん・・・・・」
訳もなく悲しみがこみ上げてくる

「え?七瀬、乃木坂でアイドル活動始めたの?」
「違う、もっと前から、高校生の時から」
「え?じゃあ、大学で知り合った時にはもうアイドルしてたの?」
「それも違う、ウチ大学に行ってへん・・・・・何でそんなこと言うの?」
自分が自分じゃなくなるようで、声が小さくなる。

『どうしたんだ?七瀬?』
「さっきから、馴れ馴れしく呼ばないでよ!!大学なんか行ってないって言うてるし、乃木坂のメンバーって言ってるやんか!!!」
『うーん、確か財布の中に学生証を入れてただろ?』

そう言われて、私は自分の財布の中を見るとそこには・・・・・

○○大学 △△学部 ××学科 西野七瀬
とあり、私の顔写真が載っていた。

「こんなん、知らへん!!!」
思わず、財布ごと床に叩き付けてしまう。
そして、自然と涙が流れた。

『取りあえず、ソファーに座って。今までの会話を整理しよう。優花、頼める?』
「分かった」
優花という女の人が私をソファーまで連れて行って一緒に座ってくれた。

名前という男の人がソファーの正面の床に座り込む

今度は何を言われるんやろう?
不安が自分の中から湧き上がってくる

名前という人から出てきたのは、こんな言葉だった。

『なあ、優花。俺どうしても、七瀬が嘘とか冗談を言ってるようには思えないんだけど』
「実は、私も思ってた」

え?
二人の顔を見ると少し心配そうな顔をしていた。

『七瀬、悪いんだけどさ。乃木坂に入る直前から入った後の話を聞かせてくれる?』
「えっと・・・・・」

私は、乃木坂に入るきっかけと入った後の活動について、少しずつ話した。
二人は時には質問を交えながら話を聞いてくれた。

『やっぱり、知ってることとズレがあるなあ』
「だよねえ。ここにいる七瀬は、私たちの知ってる七瀬に見えるけど、別の七瀬ってことになるよね」
『まあ、そうなるよな。話が全部真実なら』
「ウチ、嘘なんて・・・・・」
『ごめん、嘘言ってるとかそういうことを言いたかったんじゃないんだ』
反論する私に謝る名前という人

「でも、どういうこと?中身が別人と入れ替わったとか?」
『いや、西野七瀬って自分のことを認識してるんだから、それはない』
「ちょっと、話が飛躍しすぎたかw」
『いや、全部否定しなくてもいいのか・・・・・』
「どうしたの名前、何か心当たりでもあるの?」
『優花、パラレルワールド(並行世界)って分かる?』
「なにそれ?」
『いや、SFの映画や小説とかによくある設定なんだけど』
「ふざけてんの?」
『いや、結構マジな話で。優花、あの時こうしていれば違う人生だったかもって思うことってない?』
「そりゃあ、あるけど・・・・・」
『七瀬が、乃木坂のオーディションを受けるという選択をしていたら?』

名前という人と優花という人が私のことを見る。

「つまり、今目の前にいる七瀬は、私たちと出会う前に乃木坂のオーディションを受けてアイドルになった七瀬?」
『多分、そういうことだと思う。で、何故か乃木坂を受けなかった七瀬と入れ替わった』

私は、二人の話を聞いて口を開いた。

「じゃあ、ここは乃木坂を受けなかったら過ごしていたはずの人生?世界なん?」
『そういうことだと思う』
「そんな、アホな話」
『でも、そうだと話が繋がらない?』

確かに・・・・・

そこで優花という女性が声を上げる
「待って、じゃあ私たちの知ってる七瀬は?」
『たぶん、アイドルになることを選択した七瀬の世界に行ってる・・・・・と思う』
「そんな!?七瀬はこっちに帰ってこれるの?そもそも、向こうでアイドルなんて・・・・・」
『原因が分からない以上、どうしようもない。それに優花」
名前という人が私を見る。

優花という人がハッと気が付いたような顔をした。
「一番不安なのは元の世界に戻りたい二人の七瀬だよね。ごめん取り乱して」
「え?あ、うん」

優花という人が謝ってくれた。

『とりあえず、自己紹介しようか』
「そうだね、何か変な気分だけどw」

そう言って二人は私に自己紹介してくれた。

男の人の名前は、苗字名前さん
こっちの世界のなながお付き合いしている人らしい。
付き合って、4年目で現在同棲中。
ななの2つ年上の人で大学の先輩

女の人は加藤優花さん
ななの大学の友達で1年生の最初の頃からの付き合いの友達とのこと
結構かわいい。
話した感じでは見た目と違って結構サバサバしている。

ななを含めた3人は仲が良く、今日は3人でなな(と名前さん)の家で鍋をする予定だったらしい。

「とりあえず、ご飯食べない?」
『そうだな、今後のことも考えないといけないけど、とりあえず食べるか』
「七瀬、そこに座って」
「え?え?」

そういうと二人は私を床に座らせて、テーブルを持ってきて鍋の準備をする。

『まあ、遠慮なく食べて』
「七瀬、私がとってあげる」
「あ、ありがとう」

二人の勢いに押されて、鍋を食べ始める。

「七瀬、やっぱりアイドルって大変?」
「え?」
「いや、乃木坂の活動ってどんなのか興味あるじゃん?」
『自分の彼女がアイドルだったかも知れないと思うと、我ながらよく付き合えたなw』
「バカみたいなこと言ってないで、そこのポン酢とって」
『へいへい』

二人の雰囲気に少し気持ちが落ち着き、私は自分のことを少しずつ話した。
二人は私の話を相槌を打ちながらちゃんと聞いてくれた。

家族ともメンバーとも地元の友達とも違う新鮮な気持ちでご飯を食べることが出来た。

ご飯も食べ終わり、後片付けも済んだ後で名前君が口を開いた。

『優花、今日はどうする?』
「あ、泊まる!七瀬一緒に寝よう?」
「え?」
『まあ、ベッドは一つしかないしなあ』
「え?ベッドって一つしかないん?」

さすがに動揺してしまう。

『そりゃあ、同棲してるしなあ。いつもは七瀬と同じベッド寝てるけど・・・・・』
「ダメに決まってるでしょ!!ほら、七瀬が怯えてるじゃん」
『分かってるって、リビングで客用の布団敷いて寝るよ』

こうして、私は優花さんと一緒に寝ることになった。
「加藤さん、ゴメンね。色々と」
「あ、私のことは優花って呼び捨てでいいよ。私も今更西野さんって呼べないし」
「わかった、優花」
「じゃあ、七瀬寝よう。もしかしたら、明日の朝には元に戻ってるかもしれないし」
「うん」

私は、明日全てが元に戻ることを祈りつつ眠りについた。
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