欅の森vol2

□彼女のペースで
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レッスン室の前を通りがかると人影が見える


鏡の前でダンスをして、持っていたスマホをのぞき込む
ちょっと、考えてまたダンス

『りこぴ? もう遅いよ? 無理しないでね』
松平「ああ、名前君、ごめん」

時間が少し遅くなってきたのでレッスン室にいる、りこぴに声を掛ける

『何を見てたの?』
松平「ああw これw」

りこぴが恥ずかしそうに、スマホを見せてくれる

『誰鐘?』
松平「うん」
りこぴが小さくうなずく

欅坂としてのラストシングル、「誰がその鐘を鳴らすのか」を音楽番組で披露させていただいた時の映像だった

『何かあったの?』
松平「うーん」
『あ、いいよ、言いたくないなら・・・・・』
松平「あ、ごめん、もう少し振り付けを変えたら、良く見えるんじゃないのかなあって」
『え?』
松平「ごめん、やっぱ、生意気だよねw」
りこぴが苦笑いする

『いや、そんなことまで考えてるんだって、ビックリした』
松平「ん??」
りこぴが不思議そうな顔で俺を見る

『ファンのために、もっと良くしようってことでしょ?』
松平「それが一番なんだけど」
『けど?』

松平「うーん」
りこぴは、ちょっと目をつむり考えた様子

そして、考えがまとまったのか、目をゆっくりと開き俺を見る

松平「欅坂として活動できるのは、あと少しでしょ? 後悔したくないのかも」
『そっか』
松平「うん」


松平「この振り付けを、こうしたらどうかな?って思うんだけど」
りこぴが元の振り付けと考えた振り付けを見せてくれる

まあ、少し変わっているのは分かる

松平「ダメかな?」
『いや、いいと思うけど・・・・・俺の守備範囲外だからw りこぴがこっちの方がいいって思うならそれが正解なんじゃないかなあ』
松平「え〜、何か頼りないw」
『無茶言うなw TAKAHIRO先生に相談したらいいじゃん』
松平「私なんかが、振り付け変えたいって言っていいのかな・・・・・」
りこぴの顔が不安そうになる


『誰鐘ってさ、決まったセンターいないんでしょ?』
松平「うん」
『全員センターってわけじゃないけどさ、りこぴの特別な曲なわけだし、良いものにしたいならやるべきなんじゃないかな?』
松平「うーん、そうだね」
『TAKAHIRO先生、怒らないと思うけどねw』
松平「私もそう思うけど・・・・・やっぱり勇気がいるw」


『えっと、これをこう変えるんだっけ?』
りこぴの変えた振り付けを見様見真似でやってみる

松平「違う!w 下手っぴ、こうだってばw」
『ん、こうじゃなくて?』
松平「だから〜w 本当にダンス下手だねw」
『ダンスなんてやったことないもん、運動神経もそんなに良くないしw」


数日後

松平「リハーサルであの振り付けやってみる」
『あ、TAKAHIRO先生に話したんだ』
りこぴが小さく首を振る

『リハーサルで、ぶっつけでやるの?』
松平「うん」
『そっか、頑張れ、リハーサルは見れないんだけど』
松平「え〜、ひどーい」
『しょうがないじゃん、色々と仕事があるの、リハーサルが終わるぐらいには行けると思うんだけど』


俺が会場に着くとちょうどリハーサルを終えたメンバーたち

少し離れたところに居た、りこぴと目が合う

りこぴが両手で大きな丸を作る

ん??

あ!? 考えた振り付けOK貰えたの?

りこぴに教えてもらった、誰鐘の振り付けをちょっとやってみる

りこぴは、笑いながら頷く

その後、口パクで

松平(ヘ・タ・ク・ソw)

と言ってきたので

(う・る・さ・いw)
と返した


りこぴにいのりが近づき
井上「りこぴ? ん、名前君? 二人、何かあったん?」
松平「別にw」


小池「名前? ん、りこぴ??」
みぃちゃんが俺に声を掛け、視線の先にりこぴがいるのを確認する。

小池「何かあったん?」
『別にw』
小池「絶対に何かあるときのやつやんw それよりもさっきの気持ち悪い動き、あれなに?w」

どうも、りこぴに教えて貰った誰鐘の振り付けは、俺がやると気持ち悪い動きに見えるらしい

『いいじゃん、もうw』
小池「なあ、もう一回見せてw」
『絶対イヤ』
小池「笑わへんから、笑わへんからw」
『それ、絶対笑うやつだろ』


後日、自分の考えた振り付けをTAKAHIRO先生に褒められたこととファンの反応が良かったことを嬉しそうに、りこぴは話してくれた


松平璃子

彼女は、彼女のペースで着実に前に進んでいます。


Fin


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