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□白ニット王子と青ニット王子〜恋は突然に
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退屈……………
僕も もうイイ歳だし
親も国民も安心させたいのは
理解してるつもりだけど
立場上 政略結婚が前提とか
本当 夢がないと言うか………
確かにどこに出しても恥ずかしくない
小さい頃から確かな教育を受けた
王族のご令嬢が相手と言うのは分かるけど
似たり寄ったりの化粧と香水に
……………僕はもう限界で
「 少し風邪に当たりたい。」
最もな理由をつけて
御母様の作られた花園へと逃げ込んだ
遅くなれば 執事の東雲のこと
直ぐにここへと迎えに来るだろうし
好きでもない相手なら
別に僕が決めなくても
御父様が気に合った相手を選ぶだろう
自由がない僕には
この花園だけがあればいい…………
「 あの……………すみません。」
誰も居ない筈なのに声がして
視線を這わせそれを追えば
その衝撃は
僕に取っては初めての感覚で
人がいたことに驚いたんじゃない
間違いなく男だとは分かるのに
僕はその容姿に釘付けになった
だ、だって………
さっきまで会っていた
あの彼女達は何だったの?って
僕を迷宮に送り込むほどに
誰よりも 可愛い……………んだもん
ほら、薔薇…………薔薇が見える…………
「 あの………雅紀王子?」
見とれてボーッとしてた所偽で
一瞬 反応が遅れてしまう
「 え?僕を知ってるの?」
「 勿論。
ニットが好きで
今回のパーティーにも着用って
したくもない恰好させられましたから。」
そう皮肉めいて言われてるのに
そんな表情すら僕をドキドキさせる
「 あ、あの…………あなたは?」
「 これは失礼
僕は隣国 櫻井王国の嫡男
翔、と申します。
今日は妹の付き添いで来ましたが
あまりに退屈でしたので脱け出したところ
とても綺麗な花園が眼に入りまして……
勝手にお邪魔してすみません。」
「 いえいえ………
気に入って頂けたなら
母も喜んでると思います。
それに…………
確かに退屈なパーティーです。」
花に囲まれた芝へと直に座ると
彼もまた頭を下げ隣に腰を下ろした
「 ……………王子も、ですか?
主役なのに?」
「 主役でも主役に有らず、ですよ。
結局、選ぶのは
父や彼に仕える者達ですし
国や王家の利益が優先ですから。」
「 フフ…………
男の癖にティアラなんかしてるから
脳内お花畑の坊ちゃんかと思ったら
案外ちゃんとされてるんですね。」
失礼………呟くと
突然に身体を横たえて
ニッコリと微笑むから
何気に毒を吐かれてるとは分りつつ
や、ヤバイ…………
胸がキューンって言った
凄く凄く………………可愛くて
僕の回りにハート飛んだりしてないかな?
顔がニヤケてくるのをグッと我慢して
気持ち顔を引き締める
「 こ、これは
官女が面白がってしたまでです。
僕の趣味ではありません。」
彼は身体を起し
僕の顔を覗き込んでくると
「 ごめんなさい。
からかった訳ではないですから。
ほんと言うと……………
凄く…………似合ってます。」
真剣な顔して
なっ、何このツンデレ!!
ヤバイヤバイ………
僕この数分で堕ちかけてるんですけど……
「 あ、あの…………
あ、あなたも僕と同じ立場なら
その……いずれは結婚して
国を継がれるのでしょ?
もしかしてもう……………。」
今にもバレてしまいそうな
気持ちを誤魔化すように話をふると
膝に両腕を組んで乗せ
遠くへと視線を巡らせた
「 王室は…………
弟が継ぐ事が決まってます。
結婚なんて考えた事もない
なぜなら、僕には夢があって
自国にいては果たせそうもなくて
だから近々
国を出る事になってるんですよ。
その下見ってのもあって
妹の付き添いはある意味
口実と言うか………………、」
「 え?
この国へ来られるんですか?」
「 はい。
こちらは銀細工が有名でしょ?
そしてとても有名な職人さんが
いらっしゃる。
僕はその人が最後の職人と聞いて
是非、弟子にしてもらいたいと………。」
驚き戸惑う彼を他所に
僕は彼の手を取ると走り出した
「 一緒に来て!!」
「 え?は?な、なに?」
これは運命なんだ
神様がくれた思し召しなんだ
背中に投げ掛けてくる彼の言葉を
重厚な盾で弾き返すように無視して
パーティー会場である大広間の扉を
注目されるよう派手に開け放つと
客の間を縫うように抜け
少し抵抗し始めた彼を
グイグイと引っ張って
王座の御父様の前へと歩み寄った
「 雅紀、どこに行っていた?
その青年は?」
僕は翔の手を握ったまま肩膝を付き
胸に手を当て頭を下げると
「 御父様、突然ではありますが
僕はこの櫻井王国の翔王子と結婚します。
彼は僕の運命の人です。」
僕の宣誓に
その場にいた誰もが発狂した
この事態に翔は放心状態
御父様に至っては眼を開けたまま
気絶をしてしまった
「 信じらんない。
馬っ鹿じゃねぇの?
俺と結婚するって言うお前もお前だけど
それを許す国王も国王だよ。
うちの親父も親父だし
何がお互いの利益になる、だ。」
本音を曝け出すようになった
翔の口の悪さには若干 引いてるけど
「 僕にも弟がいて良かったね。
ウフフ………愛は勝つだよ。」
「 愛は勝つじゃねーわ。」
外堀を埋められて
納得してないのは翔だけなんだけど
なりたい銀細工のお弟子さんにもなれて
悪くない環境に
その横顔が少し照れ臭そうなのは
満更でもないのかも
後はこれから少しずつ
僕を好きになってくれたら
嬉しいなぁって……………
「 クフフ………僕を一目ボレさせた
可愛いすぎる翔が悪いんだよ。」
言って抵抗する翔の頬にキスすると
真っ赤になって呟いた言葉に
僕は唇を奪わずにはいられなかった
「 俺が悪いって……………
俺も十分にお前に一目ボレだわ。」
おわり