★Novel★
□雨夜の月
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照明の光色に慣れた頃、
遺体の頬の一部がワントーン暗いことに気が付いた。
どうしてだろう。
「柚木。来てくれ。」
自分を呼ぶ松山の声に我に返った。
「今行く。」
雨足が強くなったことと、捜査官の往来により、
所々ぬかるみと化した地面を気にしながら、
松山の元に辿り着く。
「柚木、遺体の前で何を考え込んでいた。」
「いや、遺体の頬の色が一部違って見えたみたいだが・・・多分気のせいだろう。」
「気のせいでそんなに考え込むのか。それと、・・・」
「柚木、周囲に手掛かりになりそうなものは何もなかったそうだ。」
松山が何か言いかけたが、
それを打ち消す大きな声で桜木さんが現状を教えてくれた。
「この雨ですし、手掛かりもないとなると厳しくなりそうですね。」