★Novel★

□雨夜の月
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小雨が降る雑木林。

広葉樹の枯葉が幾重にも重なっており、
腐葉土は雨を受け、
地面はいつにも増して柔らかい。

茶色と緑の広がる世界で、
立ち入り禁止のテープの黄色と
雨に濡れてところどころ水溜まりが出来ているビニールシートの青色が、
我々の行くべき場所を明示している。

周囲から漏れ聞こえる現状を耳に入れながら、
立ち入り禁止のテープをくぐる。

ビニールシートの向こうには、遺体がある。

先に遺体と対面した同期の松山睦樹の表情が曇っていく。

どういうことなのだろう。

遅ればせながら、遺体と対面して、松山のその表情の変化理由を理解した。

遺体に損傷はなく、抵抗した様子もみられない。

死因は、真新しい注射器の跡が見受けられ、毒物によるものということだ。

「何も所持していないです。周囲を捜索していますが、今のところ、身元を示すものがまったく見つかっていません。」

命綱を腰に付けた捜査員が、急斜面を下りながら周囲を捜索しているのが見えた。

「格好が特徴的なので、その関係を洗えば身元が分かるかもしれませんよね。」

松山が班長の桜木さんと捜査の突破口になりそうなことを話しているのを横目に、
身元不明の遺体の格好に存在を隠された何かを感じていた。

初見の際には点いていなかった照明が点灯したためだろうか。
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