*short〜短編〜

□月下の狼 【前編】
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僕はカズ。
僕は、人間じゃない。
狼と、人間のクォーター。
だから耳と尻尾が生えてるの。
でも頑張れば仕舞えるの。
あんまり長く仕舞えないけど。

僕はお山で暮らしてたの。
お母さんと、2人きりで。
お母さんはよく言うの。

「人間は怖い生き物よ」

って。僕は知ってるの。
人間が銃を持ってお山を荒らすこと。
仲間を傷つけること。
だから人間が大嫌いだ。
僕のお母さんは、人間に捕まりそうになった僕を庇って、死んじゃった。
人間が許せない。
ひいおばあちゃんは人間だけど、狼のことが大好きだから、いい人。

僕は独り。
お母さんが殺された時、何とか逃げてきた。
僕はお母さんを殺した人間を殺した。

満月の夜だった。

狼と人間のハーフはその意思で狼にも、人間にも変われる。
でもクォーターは意思では完全な人間や狼に変わることは出来ない。
お月様の力が必要なの。
お月様にお願いして、狼や、人間になれるの。
だからお月様が出てない間は人間でも、狼でもない不完全な姿でいるの。人間に耳と尻尾が生えたような姿。

お月様が大きいほど、僕の力は強くなる。
クォーターの子の特性なの。


お母さんを殺した人間に復讐するために、その人間の顔と匂いを覚えた。
満月の夜を待ち、のこのこやって来た人間を噛み殺した。

許せなかった。

お家に帰るとシンと静まり返っていて...寂しかった。
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