*short〜短編〜

□真紅の瞳
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ここは怪物王国。
ありとあらゆる種類の妖怪、魔物達の潜む魔境。
その全ての怪物を取りまとめる長。

長は代々吸血鬼であり、その瞳は真紅に染まっている。
僕のような下級吸血鬼なんかは、まだ十分に血も吸えなくて、真紅には程遠い色。
それが原因で、僕はいつもいじめられていた。




生まれた時は皆瞳は薄茶なんだ。
それから段々紅みを増していく。
髪の色も、黒や焦げ茶。
だけど...僕は。
ボクだけは。
違っていた。




なんで僕は、こんな、醜い体に生まれてきたのだろう。
こんなことなら、いっそ死んでしまえと思ったこともあった

でも、それも出来なかった。
その事実が僕の心に突き刺さり。
僕は、長い間心を閉ざした。
決心したんだ。
一人で生きていくって

もう、何も言われない、静かな場所で、ひっそりと生きていくって。


僕は背中の翼を出して羽ばたく。
光のない、怪物王国の空を
懸命に飛ぶ。
もう、あの頃になんか...。

頬に温い水滴を感じながら吸血鬼の住む住処を後にした。
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