少女の物語

□四章『噂の発祥』
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「神殿の情報だと…?」



 ゼルガディスは訝しげにゼロスを睨みながらそう復唱した。「ええ、」とゼロスは首を縦に振りながら、話を続ける。


「と言っても、『神殿の存在を一番知っている"人"のいるであろう場所』の情報ですが♪」

「要するに、知ってるやつの住所ってことか?」

「まぁ簡単に言ってしまえばそうですね。」

「で、それはどこにあるんですか?」

「――地図には存在しませんが、ここより北に向かえば、深い深い霧に包まれた森があります。その森を抜ければ、街があるそうです。しかもその街は、神殿の造りに関わっているとか。もしかしたら、その街に神殿の秘密を知る者がいるかもしれませんね♪」

「………………」

「?リナさん、どうかしたんですか?」



 終始黙ってゼロスの話を聞いていたリナ。しかし、どこか様子が変だと気づいたクレイスが心配して声をかけると、リナは静かに口を開いた。



「……ゼロス、今回はやたら私たちに情報を渡すわね。いつもははぐらかして終わるくせに。 それはどうしてかしら?」

「おやおや、人聞きが悪いですよ、リナさん。僕はただ、仕事の途中でリナさんたちがお困りでしたから、手助けに来たまでです♪」

「ふ〜ん。魔族の神官であるあんたが、何の目的も無しに?」


「――」

「…?クレイス、どうかしましたか?」

「?いえ。何でもないですよ。」



 魔族、という言葉を聞いた瞬間、クレイスの体がピクリと反応したが、それはとてもとても小さな感覚だった。その証拠に、クレイスの近くにいたアメリアにも、そしてクレイス自身にも気づかないほど、些細な変化だったのだ。

 ゼロスはそれに静かに目を向けながら、「あぁ、そうでした」とポンッと手を叩いた。その様子に、リナは眉を潜めて問いかける。



「何よ。」

「今日ここに来たのは、姫君にこちらを渡すためでした♪」

「?」



 クレイスは疑問に思いながらゼロスの所まで歩みよる。ゼロスはクレイスが近くに来たことを確認すると、両手を前に出した。



「こちらの物です、姫君。」



 ゼロスがそう言うと、彼の両手に、指揮棒くらいの一つのクリスタルワンドが現れた。

柄は白銀で出来ており、その白銀には同じく白銀で出来た蔦らしき物が、ワンド全体に巻き付くように装飾されていた。先の方に近づくにつれてクリスタルが埋め込まれており、先端には金色に煌めく手のひらサイズのクラウンに、神々しく水晶玉が収まっていた。

 クレイスはそれを、不思議そうに見つめていた。やがてゼロスの手からクリスタルワンドをゆっくりと受けとると、じっとクリスタルワンドを見つめる。先端のクラウンがキラリと光を反射し、水晶玉を淡く照らした。



「(何だか…とてもしっくりします。初めて見て、触れたはずなのに。まるで、これを昔から知っている、いや、使っていたような感覚……)」



 クレイスはゼロスに目を向けた。どうして、これを自分に与えたのかと問うように。
ゼロスはその視線と問いに気づいたのか、笑顔のポーカーフェイスを崩さずに答える。



「姫君が必要となると判断しました♪ 魔法をお使いになるさいは、そのワンドが貴方の杖となりますよ。」

「私の…杖……。」



 ゼロスの言葉に、クレイスは再びクリスタルワンドに視線を戻した。








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