少女の物語
□四章『噂の発祥』
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朝食を食べ終えて酒屋を出たリナ一同とクレイスは、道中でこれからのことを話し合う。
「クレイスの記憶を取り戻す旅になるのはいいですけど、まずはどうするんですか?リナさん。」
「手っ取り早いのが、神殿を探ることじゃないか?」
「でも噂がわんさかあるんだろー? 探ってたらキリがないと思うぞ?」
「必ずしもその神殿の情報源がどこかにいるはずだ。ソイツを探すことができれば…」
「うーん、……クレイスー。なんか思い出すこととか、ない?」
リナに話を振られたクレイスは、大きな白いリボンに顔が隠れるんじゃないかというくらい俯いて、じっと考える。
「(神殿……。私は、何でそんな神殿にいたんだろ。茨で繋がれてたのは、何故? ……わからない。)」
クレイスはいつの間にか閉じていた目を開いて、申し訳無さそうに首を左右に振った。
「ごめんなさい、何も、思い出せないです……」
「そう。まぁ、無理もないわね。」
「焦らずゆっくり思い出していきましょう! 大丈夫、クレイスには私たちがついていますよ!」
「、ありがとうございます、アメリアさん。」
アメリアはクレイスに微笑んで、クレイスの頭を撫でる。クレイスもまた、うっとりと心地良さそうにその感触を楽しんでいた。和やかなその空気に、様子を見ていたゼルガディスたちは呟く。
「――まるで姉妹だな。」
「そーだな。ま、アメリアにとったら妹が出来たみたいで嬉いんだろ。」
「……それにしても、困ったわね〜。ノーヒントで探せっていう方が無茶なんだけど。」
お手上げというように、「はぁ…」、とリナがため息を吐いたその時
「――何かお困りのようですね♪ リナさん。」
第三者の声がして、全員が一斉に声の方向に振り向いた。そこには、いつものポーカーフェイスを装ったゼロスがいた。
ゼロスを視界に入れたクレイスは驚いて声を上げる。
「! ゼロスさん!」
「!クレイス、あんた、こいつのこと知ってるの!?」
「あ、は、はい。昨夜お会いしましたから。」
「なんであんたはそーいうことを最初に言わないのっ!」
「ひぇっ…! あ、えーと、その…、り、リナさんたちこそ、ゼロスさんとはお知り合いですか?」
「知り合いといいますか、何といいますか……」
「毎回面倒ごとを押し付けられたりする仲だな。言うなれば。」
ゼルガディスと苦笑を浮かべているアメリアのその言葉に、クレイスは首を傾げるしかない。
クレイスに気づいたゼロスは深く一礼した。
「おはようございます、姫君。昨夜以来ですね♪」
「お、おはようございます。あの、ゼロスさん、どうしてここに?」
「いえ、ただちょっと皆さんのお力になればと思って来ただけですよ♪」
「?どういう意味よ、それ。」
リナは訝しげに眉を潜めながら、ゼロスにそう問いかけた。ゼロスはニコニコと笑いながら、ぴっと指を立てて話し出す。
「――神殿の情報を提供しに来ました♪」
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