少女の物語

□四章『噂の発祥』
1ページ/3ページ

朝食を食べ終えて酒屋を出たリナ一同とクレイスは、道中でこれからのことを話し合う。



「クレイスの記憶を取り戻す旅になるのはいいですけど、まずはどうするんですか?リナさん。」

「手っ取り早いのが、神殿を探ることじゃないか?」

「でも噂がわんさかあるんだろー? 探ってたらキリがないと思うぞ?」

「必ずしもその神殿の情報源がどこかにいるはずだ。ソイツを探すことができれば…」

「うーん、……クレイスー。なんか思い出すこととか、ない?」



 リナに話を振られたクレイスは、大きな白いリボンに顔が隠れるんじゃないかというくらい俯いて、じっと考える。



「(神殿……。私は、何でそんな神殿にいたんだろ。茨で繋がれてたのは、何故? ……わからない。)」



 クレイスはいつの間にか閉じていた目を開いて、申し訳無さそうに首を左右に振った。



「ごめんなさい、何も、思い出せないです……」

「そう。まぁ、無理もないわね。」

「焦らずゆっくり思い出していきましょう! 大丈夫、クレイスには私たちがついていますよ!」

「、ありがとうございます、アメリアさん。」



 アメリアはクレイスに微笑んで、クレイスの頭を撫でる。クレイスもまた、うっとりと心地良さそうにその感触を楽しんでいた。和やかなその空気に、様子を見ていたゼルガディスたちは呟く。



「――まるで姉妹だな。」

「そーだな。ま、アメリアにとったら妹が出来たみたいで嬉いんだろ。」


「……それにしても、困ったわね〜。ノーヒントで探せっていう方が無茶なんだけど。」



 お手上げというように、「はぁ…」、とリナがため息を吐いたその時



「――何かお困りのようですね♪ リナさん。」



 第三者の声がして、全員が一斉に声の方向に振り向いた。そこには、いつものポーカーフェイスを装ったゼロスがいた。
ゼロスを視界に入れたクレイスは驚いて声を上げる。



「! ゼロスさん!」

「!クレイス、あんた、こいつのこと知ってるの!?」

「あ、は、はい。昨夜お会いしましたから。」

「なんであんたはそーいうことを最初に言わないのっ!」

「ひぇっ…! あ、えーと、その…、り、リナさんたちこそ、ゼロスさんとはお知り合いですか?」

「知り合いといいますか、何といいますか……」

「毎回面倒ごとを押し付けられたりする仲だな。言うなれば。」



 ゼルガディスと苦笑を浮かべているアメリアのその言葉に、クレイスは首を傾げるしかない。
クレイスに気づいたゼロスは深く一礼した。



「おはようございます、姫君。昨夜以来ですね♪」

「お、おはようございます。あの、ゼロスさん、どうしてここに?」

「いえ、ただちょっと皆さんのお力になればと思って来ただけですよ♪」

「?どういう意味よ、それ。」



 リナは訝しげに眉を潜めながら、ゼロスにそう問いかけた。ゼロスはニコニコと笑いながら、ぴっと指を立てて話し出す。



「――神殿の情報を提供しに来ました♪」











次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ