少女の物語
□二章『記憶なき少女』
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少女は夢をみていた。
安心する手で、頭を優しく撫でてくれる、無邪気な笑顔を浮かべる、全てを統べる女性。
困ったような笑顔を浮かべてても、けして拒みはしない、髪の長い闇の王。
難いのいい体に、肩に自分を乗せてくれた、魔竜の王。
魔法の練習に付き合ってくれた、たった一人の神官をつれた、面倒見の良き獣の王。
自分を着せ替え人形のように着飾って遊んでいた、茶目っ気の多い海の王。
書物を共に読んで、よく困らせてからかった、覇者の王。
最後に、
自分を優しく抱き締め、その温かさが心地よく安心した、少女のように間違えてしまうほどの美少年の姿をした、冥界の王。
あぁ、なんでだろう……。
貴方たちの温かさも、優しさも覚えているのに、名前と姿が、思い出せない。
誰? 貴方たちは、一体誰?
貴方たちは、私の、何なの………?
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