COLORFUL WORLD


□第9章:Comes princess of Cyan
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ビビの隣にいたペルと呼ばれたターバンを巻いた男が、人間体から鳥へと変身し空へと舞い上がって行った。大きな翼で日差しが陰る。見上げるとファルコンが羽ばたいていた。
やはり悪魔の実の能力なのだろうか。
上空で旋回しながら羽をはばたかせ風に乗っている。優雅に空を舞う鳥になったペルの姿を見つめていると、ビビはふふと笑った。

「めずらしい?」

「鳥になった人は初めて見た」

「ペルはトリトリの実の能力者なの」

「トリトリの実…」

独り言のように呟くと、ビビはにこやかに笑みを向けた。
チラリとクザンを見ると噴水の淵に寝そべりながら、眠たそうに大きなあくびをしていた。
その姿を横目にビビに近づくと、声を落として話しかけた。

「ビビ、ペルと少し話をさせて貰えないかな…ゾオン系のことでちょっと聞きたい事があるの」

「ええ、もちろん」

そう言った後、ビビが空に向かって「ペルー!」と呼びかけると、突如、廊下の奥から地鳴りのような走る音が近づいて来た。

「ビビ様!!ここにいらっしゃったのですね!!」

外巻きカールの髪型の男が慌てた形相で近づいて来ると、ビビの目の前で睨みつけた。

「い、イガラム…」

イガラムはリリの存在に気が付くと慌てて襟を正して居直った。そして一礼をする。

「お話し中、大変申し訳ありません」

そう言いながらイガラムはビビの手を引いた。

「支度をしに行かなくちゃ!ペルはごゆっくり〜」

イガラムに手を引かれながら、そう言い残しビビは手を振って去って行った。
呆気に取られていると、羽が大きくはばたく音が聞こえ振り返った。人間体に戻ったペルがリリに近づいた。

同じタイミングでのっそりと上半身を起こしたクザンは人間体になったペルの姿を眺めた。眠そうな目つきでゆったりと立ち上がって、大きなあくびをした。

「俺ァは先に中で休んでるわ」

それだけ言って、クザンは城の中に入って行った。


クザンの姿が見えなくなるのを確認するとおずおずとペルを見上げた。

「リリさん、私に何か御用でしたか?」

ペルは屈んでリリの視線に合わせた。

「ペルはゾオン系なんだよね?」

「さようです」

「動物の言葉って、どうやったら分かるかアドバイス貰えないかな」

「失礼ですが、何の悪魔の実をお持ちで?それによっても声の聞きやすさは異なるかと」

リリは少し俯くと小さくこぼした。

「悪魔の実は食べていないの。だけど、ゾオン系のお友達に動物の言葉分かるはずだって言われてずっと気になっているの…」

「動物と話が出来るようになりたいと?」

頷くリリをペルはじっと見つめた。そして、膝をつきリリを真っすぐ見つめた。

「リリさん、動物の言葉が分かるようになるのは良い事だけではありませんよ。当然、負の感情も聞こえて来る。悲しみも怒りもあります。動物は人間以上に素直に感情を表します。それは時に、聞いた事を後悔するような想いが膨大にある。それでも、耐えられる自信がありますか?」

拳をぎゅっと握り締めた。

パウダーリムは優しくて穏やかで、毎日が陽だまり中にいるみたいに暖かかった。
外の世界の残酷さなど想像もしたことがなかった。クザンが足を失った時に感じた胸が裂けるような苦しみも、自分の愚かさを恨んだ事も、いままでなかった。
私がもっと早く能力に気付いて使いこなしていたら、猫のリリが死ぬことはなかったかもしれない。治癒能力がどこまで使い物になるかは分からないけれど、クザンの足だって失う事はなかったかもしれないのに。
過ぎた事を悔やんでも仕方のないことだと分かっていても、猫のリリとクザンの足の事を想うと胸が張り裂けそうになって後悔をせずにはいられなかった。

「…知らなかった自分が許せないの。私はきちんと持っている能力と向き合いたい」

ペルを真っすぐに見つめた。

もう、何も失いたくないのだから。
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