COLORFUL WORLD


□第9章:Comes princess of Cyan
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事務所に戻って来るなりあたふたと小走りで動くリリに、スモーカーはいささか楽しそうな表情を浮かべた。

「おう、説教は終わったか」

「あっ、スモーカーさん、コビー。急ぎの仕事ってどれがありますか?」

そう言いながらリリは山積みの書類に手を伸ばしパラパラと目を通している。

「急ぎの書類はさっき片付けたから平気だよ。スモーカー中将は急用が出来て、もう出ちゃうから何かあれば今のうちに」

コビーがそう言うとリリは二人に向かって頭を深く下げた。

「実はたった今、王位継承の儀に招待されてノースポールに向かいたいのですが‥‥。すみません、帰って来たばかりで」

スモーカーは口を歪め、腰をかけていた机から降りた。

「‥‥もしかして、カシ王子の事じゃねェだろうな?」

頭を上げたリリはスモーカーにまん丸い目を向けた。

「はい、そうです」

「リ…リリちゃんの交友関係って、何だかすごい人達ばかりですね…‥」

スモーカーは葉巻の煙を深く吐き出しながら、面倒臭そうに頭を掻いている。

「ノースポール王国から護衛の依頼を受けている。ちょうど俺達も今から向かう所だ」


そうして、支度を終えた一行は海軍の船はスモーカーとリリを乗せ出航した。コビーは港で敬礼をして見送っている。

「‥‥で、何でアンタも乗ってるんだ?」

訝しい顔でスモーカーは隣を見上げる。悠々と隣で潮風を浴びるクザンに向かって煙を吐いた。

「あらら…、固いこと言うなよスモーカー。お前のせいで俺がわざわざG5まで来たんでしょうが」

「アンタが勝手に来たんだろうが…」


『ノースポール王国、王が死去。あのお騒がせカシ王子が、過去最年少国王に。前途多難なノースポールは財政不安に?!』
新聞の見出しに大きく掲載されている記事を見て、リリは心配そうに呟いた。

「カシ‥‥」


クザンと住んでいた家に近い、思い入れのある町の一つ、ノースポール。港に着くやいなや人や船で溢れ、以前来た時よりも活気に満ちていた。懐かしい町の光景が広がって来ると、海兵達は帆を畳み始め、降りる準備を始めた。スモーカーは碇を持ち上げ、海へ放り投げた。

「俺達はここで別れる。リリはしばらく休暇って事にしておいてくれ」

スモーカーは鉄の鎖が海へ潜って行くのを静かに見つめている。

「さっきガープさんから連絡があった。政府の中でリリを連れ戻す動きが出ているらしい。ずっとセンゴクさんが情報を止めていたから良かったものの、それももう無理だ。G5に政府の奴らが来るのも時間の問題になっちまった」

「んなモン、とっくに聞かれてるよ。知らねぇって切ったがな」

スモーカーは腕を組み舷に寄り掛かった。

「そんな誤魔化しも長くは続かねェ」

「うちにゃァ、あいにく世間知らずな“リリ”って小娘しかいなくてね。“ドロイアン・エヴァー・サクロ”なんていないの一点張りで通させて貰ってるよ」

クザンは口端に笑みを残し「スマンな」と、小さく溢した。
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