COLORFUL WORLD
□第8章:White chase
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ケープの中からチラリと覗かせたワインの瓶。ドフラミンゴの瞳に映ったそれは、パウダーリムのワインだった。ドフラミンゴは思わず唾を飲み込んだ。その慣れ親しんだ味を喉が酷く渇望している。自然と唇をなめずりしていた。アルコール自体久々だ。こんなチャンスは滅多に巡って来ない。
「…良いだろう、先に飲ませろ」
「教えてくれた後で飲ませてあげる」
「そりゃァ、ナシだ。先に飲むのが条件だ」
サクロは少し考えたように目を伏せた後、ドフラミンゴを見つめた。
「…分かった。その代わりちゃんと教えてよ? やっぱ教えないとかなしだからね」
「フフフフ…いくら俺でもこの監獄内でそれをやるような馬鹿はしねェ…」
サクロはワインオープナーを取り出し手慣れた様子でコルクを開けた。
ワインを持つ手を檻の中に伸ばし、大きく口を開けた寝そべるドフラミンゴに注いだ。ドフラミンゴは喉を鳴らし、二回、三回と飲み込んだ所でサクロは注ぐのを止めた。
ドフラミンゴは全てを飲み込み、舌で唇を拭った。一息つくと、満面の笑みを浮かべていた口を歪め、額に青筋を浮かべた。
「これ‥‥中身が違うじゃねェか‥‥!!」
「やっぱり、分かるんだ。高揚感みたいなものを感じない?私にはその感覚が分からないんだよね」
関心を含んだサクロの言葉にドフラミンゴは更に青筋を浮かべ歯を食いしばった。
「これはボトルが全く同じだけど、中身は私が研究中のパウダーリムのワイン。再現したつもりなのに、何度飲んでも違いがなかなか分からなくて、あなたにこのワインの秘密を聞きに来たの」
サクロは瓶を掲げ首をかしげる。そして、ドフラミンゴの顔をみつめた。
「密閉されてた瓶の中身が違うとはな‥‥このクソガキが…」
「先に飲ませろって言うだけの理由があるんでしょう?」
「‥‥」
「これだって美味しいでしょう?もっと飲みたくない?」
ワインの瓶を差し出し相変わらず澄んだ目を向けるサクロに対して、ドフラミンゴは腹の底にある黒い感情がふつふつと湧き出ていた。
ドフラミンゴはしばらく黙ってからサクロを見上げた。あの死んだ猫もこんな瞳をしていた。思わず目を細めてしまうほど眩しく煌めいた眼差しに苛立ちが募る。腹の底が煮えるように燃え盛る感情が次々に溢れ出る。
海軍の2人もこの場にいる、面白い展開になりそうだと思った。