COLORFUL WORLD
□第8章:White chase
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G5からインペルダウンまでの道のりは、船に慣れていないリリにとっては苦行の旅になった。こんなに長いこと船の上で過ごすのは初めてで、船で寝泊まりするのも初めてだった。
酷く船が揺れる日も、穏やかに波打つ日も、ぐっすりとなんか眠れない。たしぎが言っていたように、酷い船酔いは陸に上がってからも続き、地面に降り立った今でも視界が揺れ目が回る。
ふらふらした足取りでリリが船を降りると、スモーカーはすかさずリリの腕を取り引き留めた。
「最後までキッチリけじめつけて貰いましょうかね、お嬢さん」
「スモーカー中将、帰って来たばかりですよ。慣れない船旅で疲れてるでしょうし、後日でも‥‥」
「疲れてるだァ?そんなモン関係あるか。お前の説明はただの生い立ちじゃねェか。アンドロイドに育てられたのは分かったが、結局ノルディとお前はどういう関係なんだよ」
リリの腕を引っ張り上げるとスモーカーは顔を近づけた。
「お前ェの魂胆は見えてんだよ‥‥このままうやむやにしようったって、そうはいかねェぞ」
「ここまで来たら、うやむやにしようとは思ってませんよ‥‥私にも分からない事が多いだけです」
「お前が知らねぇなら、聞くしかねェよな」
スモーカーはリリのショルダーバッグをひったくり、ひっくり返して中身をバラバラに地面の上に落とした。目当ての物が見つからないと、今度はリリのズボンの左右のポケットに手を突っ込む。
「わっ‥‥!!!!何を‥‥」
左右のポケットに入っていないのが分かると、羽織っていたカーディガンを無理矢理に脱がせる。その拍子にリリはバランスを崩して、よろけた床に手をついた。スモーカーは構わずリリを睨みつけながらにじり寄ると、馬乗りになりリリの手を地面に押し付けた。
周りにいたG5の部下達はどよめき近寄った。まるで強姦をしているようなスモーカーの体勢に一斉に騒ぎ立てる。
「すもやん!!何してるんだよ!!」
「うわぁぁ、リリちゃんのそんなとこ触って‥‥」
「アオカンかぁー、スモさんらしいぜ〜」
コビーが慌ててスモーカーの腕を引っ張り制止させる。
「スモーカー中将!!何してるんですか!!」
「うるせェッ!!!本当ならお前がやるべき事だろうが!!」
「えっ…?!」
コビーは赤面し動揺したが、スモーカーは続けた。
「テメェの部下なら無理矢理にでも聞き出して、何を隠してるのか吐かせろよ!!」
「話したくない事を、む…無理矢理に暴かせるのは‥‥」
「都合の良い事言ってんじゃねェーよ!!知らねぇと守れるモンも守れねェだろが!!!」
スモーカーはリリの方へ鋭い視線を向けた。リリの腕を地面に押し付けたまま顔を近づける。
「お前は俺の部隊の一員なんだ。上官をナメンのもいい加減にしろよ」
リリの目からは涙が溢れた。次から次へと涙は溢れ、リリは嗚咽を小さく漏らした。
「あぁ〜!!リリちゃんのこと泣かしたーーー!!」
「スモさんも罪な男だよなァ」
周囲を取り囲む隊員に野次を飛ばされ、仕方がなくスモーカーはリリの腕を離すと、リリはスモーカーに抱きついた。リリはスモーカーの口から部隊の一員だなんて言ってもらって嬉しかった。
首に纏わりつくリリに、今度はスモーカーの方が慌てふためいて剥がそうとする。後からやってきたたしぎがG5の野次馬連中を押しのけた。
「何ですか…この人だかりは‥‥」
野次馬の中心には、リリに馬乗りになっているスモーカー、スモーカーの首に抱き着くリリがいた。どう考えても普通の光景じゃない。そして悲鳴をあげた。
「きゃぁぁぁ!!!!!ハレンチ!!!!」
「いや、ちが…!!…おい、リリ!!お前いつまでそうやって‥‥」
リリが力を込めて抱きしめていた首は、突如煙が漂い、やり場のない腕だけが浮いた。消えたスモーカーを探すと、すぐ横で地面を踏みつける足が二本見えた。スモーカーが指をバキバキと鳴らしながら、仁王立ちで睨みつけている。
「おめェにゃぁ、他にも教育が必要みてェだな‥‥」