COLORFUL WORLD


□第8章:White chase
10ページ/15ページ

ドフラミンゴの思い通りにはさせない。私の感情を揺さぶり、剥き出しにするのを望んでいる。ここで私が感情的になったら終わりだ。ドフラミンゴの言う、覇気も治癒能力も、私は何一つ自分でコントロール出来ないのだから。

「俺の上に乗れよ…フフフ。熱く燃えあがろうぜ、前みたいによォ」

「やめて‥‥」

「フフフフ…つれねェじゃねェか。わざわざここまでおいでなすったんだ、俺が知ってるだけの情報をたっぷりここで話してやるよ…‥」

ドフラミンゴの思惑など分かる。私を怒らせ、この状況を一層楽しみたいのだ。

「‥もう良い、お願い、やめて!!」

そう言った瞬間、わずかに空気が震えたのをコビーとスモーカーは感じ取った。サクロの被っているケープの裾が、揺らめくカーテンのように波を打っている。閉塞された淀んだ空気から一瞬、透き通るように変わった空気は、サクロから発しているものだと悟り、スモーカーは本能的に危険を感じ、サクロに近寄った。

「これは俺とサクロの問題だ‥‥スモーカー。あんまり立ち入るなよ」

ドフラミンゴは口を歪め、唸るように低い声をスモーカーに向けた。

「コイツは今、俺の部下だ。過去にお前らに何かあろうが関係ねェ」

「部下だァ‥‥?フフフフ‥‥ノルディの事も知らねぇ海軍の飼い犬が偉そうなこと言ってんじゃねェよ‥‥」

「‥‥ノルディ…?」

スモーカーは聞きなれない単語を繰り返して口を歪めた。

「お前らそれも知らずにサクロをここへ連れて来たんだろう‥‥フフフフフ!!!知っていたらこんな所には連れては来れねェよなァ」

ドフラミンゴはどこまでサクロのことを知っているのだろう。これだけ語られた後でも、その疑問は消えないままだった。
響くドフラミンゴの声に、退屈で堪らない囚人達がどれだけ耳を澄ましサクロに関心が向いているかなど、とうに感じていたが、俺自身が聞き入っている事に気付かされたのは、サクロが異質な気を放ってからだった。知っている事を暴かせることで不利になるのはこっちだと感じた以上、口を割らせるわけにいかない。もうここにはいない方がいい、そうサクロに声をかけようとすると、背後から看守が降りて来た。


「スモーカー中将、そろそろお時間です」

看守に退去を促され、三人はリフトへと足を向けた。リフトへ乗り込み看守が上昇するためのレバーを引く。サクロはドフラミンゴを見ることが出来なかった。

「せいぜい、呪われた自分の人生を恨め‥‥フフフフッ!!!!」

寝転びながら高らかに叫ぶドフラミンゴの声はフロア中に響き渡った。
ドフラミンゴから目が離せなかった。私だけの問題ではなかったのだ。海軍のスモーカーとコビーを巻き込んだ。想像していた以上に‥‥。

リフトが上昇を始めた。サクロは最後に振り返ると、ドフラミンゴはまだ高笑いをしていた。周囲の囚人達が格子越しに不敵な笑みを浮かべながら私を凝視していた。この期に及んでドフラミンゴの狡猾さを分かっていなかった。私が知らない私の事を、この男は全て知っている。
インペルダウンに来たのは間違いだったのだと自身の甘さに気づき、握っていた手が震えた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ