COLORFUL WORLD
□第8章:White chase
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ドフラミンゴの高笑いは、レベル6のフロアに響いていた。
サクロも、スモーカーもコビーも、誰も声を発せず黙ってドフラミンゴが笑う姿をただ呆然と見つめていた。
「俺がお前の能力に気付いたのは、あの実験後だ。不思議なことにお前と寝た後は、体が軽くなってなァ‥‥」
「治癒…能力…」
その言葉を確かめるように、サクロはポツリと呟いた。
「フフフ‥‥クザンが必要としているのは、何だろうなァ?」
ドフラミンゴは卑しく笑みを浮かべた。
「もう‥‥あなたの言葉には振り回されない。クザンがどう思っていようと私は‥‥」
サクロは拳を握りしめ、ドフラミンゴの元へ一歩足を踏み出した時だった。
「おーい姉ちゃん、こっちにも来て治癒してくれよ」
「俺ともヤろうぜェ〜優しくしてやるからよォ」
そう野次を飛ばされすぐに目を向けると、周りの囚人が齧る様に見つめていた。サクロはケープを深く被り直した。
明らかに海軍の二人の男は焦りを浮かべていた。
口を堅く結び、我慢したように大人しくしているスモーカーも、いつ口を挟んで来るのだろうと楽しみだった。
このフロアに響き渡った自分の声が、どれだけの囚人達に届いたかを想像しただけで、身震いをするような興奮を覚えていた。
しばらく考え込んでいたサクロがようやく口を開いた。
ドフラミンゴの前にしゃがみ込む。
「もう行かなきゃ‥‥教えてくれてありがとう」
その言葉を聞いた瞬間、ドフラミンゴは上げていた口角を歪めた。
「有難う‥だァ?!」
サクロに顔を向け、怒号を飛ばした。
「この期に及んでテメぇは‥‥善人面に虫唾が走るんだよ…‥!!!」
サクロは黙ったまま眉根を少し寄せ、じっとドフラミンゴを見つめた。
「愚直なあまり、てめェ自身が周りを不幸にしていると身に染みて分かったろう?!」
「‥‥分かってる。…私がここに来ることが、どれだけ甘い考えだったかも」
「この状況で、お前の中に少しの悪も憎しみも生まれねェのなら滑稽だ!!!」
「‥‥あなたには、色々な、初めての感情を教えてもらった…でも、これだけは言えるの。私が憎しみを持っても変わらない、何も良い方向には変わらない。だから‥‥私は今いる人を大切にしたい、ただそれだけ」
相変わらず綺麗ごとを並べるサクロにドフラミンゴは目を細め吐き捨てるように口にした。
「すべて手に入れようなんて、甘ェ考えは捨てろ‥‥そんなに甘ェ世の中じゃねェ」
しばらく黙っていたサクロを見て、サクロの瞳が揺らいでいる事に気付いた。ドフラミンゴはふいに笑みを浮かべた。
「あァ……フフフ、少しは賢くなったみてェだな。必死に怒りを抑えてる姿は、堪らなく興奮するぜェ‥‥フフフフ!!」