COLORFUL WORLD


□第8章:White chase
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ランプを磨いていたクザンの手からガラスの筒が落ち、パリンと高い音を立てて割れた。

「あらら‥」

クザンはいつになくのんびりとした口調で、他人事のように割れたガラスを見た。
同時に小屋の玄関が開くと、人間体をしたリーフがせわしなく入って来て口にした。

「クザン、妙な噂を耳にしたよ。ノルディでの実験にチユチユの実が材料になっているって話」

「チユチユ…。トンタッタ族のマンシェリーか‥‥」

「マンシェリー姫もクザンの足みたいに、体の一部をなくしているなんて考えにくいよね。やっぱりただの噂かな」

体躯を狼の姿に戻したリーフは、緊張がほぐれた様子で一息ついて前足を出して伸びをした。

「ノルディの実験に使用する分には、爪でも髪でも構わねぇんだよ。血統因子が分かれば」

クザンは腰を屈め散らばったガラスの破片を見つめた。

「え?!そうだったの?!だったらクザンもそうすれば良かったじゃない…なんでわざわざ足なんか…。今時、任侠なんてハヤんないよ?」

リーフは呆れた顔で首を振った。床に落ちた服を咥えソファの上に放す。

「ふっ、確かにな」

「しかし、よくマンシェリー姫が政府の研究材料になる事を応じたよね。トンタッタ族ってすぐ信用してしまう素直さで有名だけど、騙されてたんじゃないのかなぁ」

「間違いなく本人の意思じゃねェだろうな」

「あぁ、マンシェリー姫ってドレスローザで監禁されてたんだっけ」

「ノルディの存在は極秘だ。それなのに、テゾーロとトラファルガー・ローがノルディの存在を知っているとなると、ドフラミンゴが一枚噛んでいるのは間違いねェ」

「ドンキホーテ・ドフラミンゴ‥‥あなどれない存在だね。さっさと殺して口封じした方が良いんじゃない」

リーフは、ガラスの欠片を拾い集めているクザンをぼんやりと見つめた。クザンは丁寧にガラスの破片をつまみ上げていた。一つずつ、一つずつ、ピースを拾い集めるように。最後の欠片をつまむと、クザンは何かを考え込んだようにその動きは止まった。

「あれ‥‥ちょっと待って、クザンがその足を失った時、数時間で痛みが消えたって言ってたのって、まさかとは思うけど…」

「水分‥‥…か」

「リリちゃんがチユチユの実の能力者?!」

「まさか…チユチユの実とはね」

「呑気な事言って…チユチユの実の副作用は寿命を縮めることだよ、クザン」

「リリが持ってるのは本来の悪魔の実の能力じゃねぇ」

クザンは立ち上がると、拾い集めたガラスの欠片がクザンの手の上でランプの淡い光を拾ってキラキラと揺らめいた。

「ノルディで能力者を使った研究が進められているとはいえ、デメリットまで再現するとは思えねェ」

ゴミ箱にガラスの欠片を捨て、手を払い、ソファに腰をかけた。重みで革がきしんでいる。
ふとクザンの手を見ると指先から血が滲んでいた。

「クザン!血が出てるよ」

「…あぁ」

慌ててクザンの元へ近寄り布を当てると、険しい顔で正面を見つめていた。

「クザン‥‥、リリちゃんて自分がノルディでの実験対象だったってこと知らないんだよね」

「あぁ‥‥嫌な予感がするぜ」
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