COLORFUL WORLD


□第8章:White chase
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降りていく度、空気の淀みは増していた。海底というだけでも、能力者には気怠さがまとわりつく。
リフトがレベル6に到着しリフトの扉が開いた。レベル5までとは違い、静まり返っているフロアがかえって不気味だった。
スモーカーを筆頭に、サクロ、コビーと続いて降りた。三人を降ろすとリフトはそのまま上昇した。

「フフフフフ‥‥‥おいおい、誰かと思ったらえれェ珍客の訪問だなァ‥」

フロアに足を踏み入れるなり、憎らしい笑い声が耳についた。

「スモーカー‥‥よく俺の前に顔を出せたモンだ。フフフ…」

饒舌に話し出すドフラミンゴに嫌な記憶が蘇り、舌打ちがこぼれた。息を深く吸い込み、心の奥にふつふつと沸き上がる嫌悪感を必死に押し込める。
俺の後に続くサクロは、静かにドフラミンゴを見つめていた。今は自分の感情を出している場合じゃない。この女の闇を探るのが目的だ。

「フン。いま、自分がいる場所が檻の内側だという事を忘れんなよ」

スモーカーの後ろへ隠れていたサクロはチラリと目を覗かせると、ドフラミンゴは高笑いを上げた。

「フフフフ‥‥お前とまた会う日が来ようとは、嬉しいじゃねェか。‥‥なァ?サクロ」

ドフラミンゴは床にべったりと張り付くように大の字に寝転び、重量のある鎖を体中に巻かれていた。顔だけをこちらに動かし、サングラスの先にあるドフラミンゴの目線は、サクロをジロジロと姿を見ているようだった。

「政府の奴隷に成り下がる覚悟が出来たのか…、命を奪われるよりはマシか?‥‥フフフ」

まるで、この女がここに来るのを見据えていたような態度。ドフラミンゴはこの女のどこまでを知っているのだろう。一筋の汗が額を伝った。
すると、ケープの中からサクロがくぐもった溜め息を漏らした。閉塞された淀んだ空気がほんの少し緩んだ気がした。

「よくこの恰好で私だって分かったね。どうしてその能力を良い事に活かせないのかなぁ…」

黄金色の瞳がドフラミンゴの姿を捉えた。栗色の長い睫毛が上下に揺れる。

「フフフ・・・テメェの価値観を押し付けるんじゃねぇ。お前の言うイイコトが誰にとっても良いと思うなよ」

「そうね。あなたみたいに、価値観は人によって違う。私にとっての普通が普通じゃなかったように」

「少しは世の中の機微に気付いたみてェだな。少し見ねェ間にずいぶん大人になったじゃねぇか‥‥フフフフフ‥‥」

世間話を交わしているようなサクロの素直な言葉に苛立った。コビーもまた怪訝な顔を見せていると、ドフラミンゴは愉しそうに二ヤリと口端を上げた。

「…また抱いてやるよ。前みてぇにうんと‥な」

胸糞が悪くなる言葉だった。わざと聞かせるように言い放ったドフラミンゴは飄々とした表情で楽しそうに口を吊り上げている。

「なっ‥‥!なんて事を‥」

コビーは顔を真っ赤にしながら、握り締めた拳が震えていた。
サクロはケープの中で拳をきゅっと握り締め、ドフラミンゴを見つめた。

「あまり時間がないの。単刀直入に聞くけど、パウダーリムのワインの秘密を教えて欲しい。あなたなら、知っているでしょう?」

「‥‥フフフ、まさかタダで、とは言わねェよなァ」

サクロは意を消したようにケープの中から瓶を出し、ドフラミンゴに見せた。

「飲ませてあげる。ずいぶん、飲んでないでしょう?」
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