COLORFUL WORLD


□第8章:White chase
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ぐんぐんと海の上を走る海軍の船。帆は大きく風を受け止め、波を跨ぐ度に船体が海面に打ち付けられる。大きく揺れる船の上で、リリは必死に縁にしがみついていた。

「うぐぅぅ‥‥っ…きもぢわるい‥‥」

こんなに揺れるものだなんて聞いていない。かれこれ何時間経っただろうか。いつまでも続く大きな縦揺れに、海と空が交互に視界の中で揺れる。

いつのまにか空は曇天に覆われ、雷鳴が鳴り始めていた。波も次第に高くなり、飲まれて転覆してしまうのではないかと心配するほどだったのだが、スモーカーとコビーは涼しい顔で悠々と立っていた。

「海が荒れてますからね‥‥大丈夫?」

「お前、そんな縁にへばりついて海の中に吹っ飛ばされんなよ」

大粒の雨も降って来たというのに、葉巻を吸うスモーカーの姿は超人的に見えた。常に咥えているあの葉巻はどういう仕組みなのだ。雨が降っても火が消えないなんて、防水?いや、それどころじゃない。長時間縁にしがみついていたせいで、腕に力が入らなくなってきた。

「中に入って休んでいた方が良いよ。眠れないと思うけど、まだまだ先は長いから」

見かねたコビーがリリを支え、船室へと連れて行った。

「情けない…ありがとう」

眠れないどころか、横になっていても波に揉まれ体がゴロゴロと転がってしまうほどだった。それなのに、2人はまだ甲板に立っている。海軍の人は本当に強い。あの筋骨隆々とした肉体だって毎日鍛錬しているだけの事はある。
私も海軍に入ったら少しは強くなるだろうか。そんな事を思いながら、グラグラと回る意識の中、天気が回復することを祈った。


そうして数日が過ぎ、悪天候に見舞われながらもようやく船旅の目的地へ辿り着いた。
インペルダウンに着いた頃には、雨は上がっていたが薄暗い不穏な雲に覆われていた。重苦しい雰囲気が威圧感のある要塞を取り囲んでいる。
コビーが帆を畳む指示を出し、着陸の準備をし始めた時、リリが顔をあげた。

「スモーカーさん、コビー‥‥ここから先は私一人で行く」

コビーは指示を出すのを一旦止め、リリの顔を見た。

「何言ってるんですか、リリちゃん」

「ドフラミンゴのところまで行ってしまったら、関係ない二人を巻き込む事になる。知らなくて良い事まで知ってしまうかもしれない、だから‥‥」

徐々にリリの声は小さくなっていった。
スモーカーは持っていた碇を海へ放り投げたあと、リリに近寄り頭を勢いよく叩いた。

「いッッたッ…!!」

いきなり殴られたリリは頭を抑えながら涙目でスモーカーを見上げた。

「バカか、お前は。ここに来た時点でとっくに渦中だってーんだよ。覚悟がねェのに、わざわざここまで連れて来るか」

スモーカーが口から出した煙が薄暗い空に吸い込まれていく。

「ご‥ごめんなさい。私の考えが甘かったんだけど…」

「まずはドフラミンゴに会わねェと始まらねェんだろ?お前の複雑そうな生い立ちは後で聞いてやる」

「リリちゃん、もう言い逃れはできませんよ。僕たちには知る権利があります」

「だけど、そのせいで二人が危険な目にあうような事があれば私は‥‥」

「お前は自分の心配だけしてろ。部下を守るのは上司の仕事だ」

リリは口を堅く結び、熱くなった胸の前で拳を握りしめた。涙を堪えながらスモーカーの横顔を見つめ、ありがとうと呟いた。

「リリちゃん、姿を見られないようこのケープを被っておいてください。一般人が入るには危険過ぎるので念のため。海楼石の成分が含んでいるので防御力もあります。」

リリはケープをぎゅっと握り、二人を真っすぐに見つめた。

「二人に話をしておきたい事があるの。私の本当の名前のこと」
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