COLORFUL WORLD
□第7章:Blackmail
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翌日、外に出ると雪は止んでいた。
まだ朝日も昇りきらない淡い暖色をした街並みには、数十センチの雪が降り積もっていて、辺り一面が浅い太陽に照らされて眩い光を放っていた。
宿から出ると真っ白に光る一面の中に、巨大な影が伸びているのが見えた。牛の角のような形をした、人型の影。建物の壁沿いにひっそりと佇んでいる様は、影がなかったら分からないほど気配がなかった。
「ひっ!!!」
ブルーノが立っていた。雪が頭と肩には数十センチの雪が積もっている。一体、何時間ここにいたのだろう。
「‥‥待ち侘びたぞ」
体に乗っている雪が落ちる事もなく、視線だけがギョロリと動いた。石像が突然動いたみたいに怖い。冷たい視線は容赦なくリリを睨む。
「何の用?ルッチとは話済んでるぞ」
硬直しているリリの背後から、クザンがのんびりした足取りで階段を降りて来た。
「そのお嬢ちゃんはこの地にほっぽり出されても構わないのか?ここからG5はだいぶ遠いぞ」
「あらら‥‥まぁ、律儀なこと」
クザンはリリの肩を寄せ、ブルーノから少し離れた場所に移った。
「アイツがちゃんとG5まで送ってくれるってよ。お前がここにいる事がバレるとマズいのはアイツらの方だからな」
クザンは微笑むとリリに背中を向け歩きだした。
「それじゃあな」
リリは泣きそうな顔で、クザンの背中を追いかけた。
「あ、あのクザン!!」
呼び止めるとクザンは振り向いた。
「ありが‥とう…。いつも助けて貰ってばっかり‥‥」
「そんなもん、お安い御用だ。…と言いたいところだが、こう偶然も重なるワケじゃねェんだから。それをよく覚えておきなさいよ」
リリは見上げたまま、唇を噛み締め、溢れそうな涙を堪えていた。そんな姿を見たクザンは、眉尻を下げ呟いた。
「‥‥さて、そろそろこっちも本気で動きますか」
―その頃、G5ではコビーの電伝虫が鳴っていた。電伝虫は葉巻を吸う仕草を見せる。
「スモーカー中将、お疲れ様です」
コビーが電伝虫に応答すると、スモーカーは葉巻の煙を吐き出した。
「おう、もうじき帰還する。変わりはねぇか?」
「特に変わったことはないんですが…ちょっと気になることがあって」
「気になる事?」
「先ほどガープ中将からお電話がありまして、なぜリリちゃんから目を離した、と叱られたんです。毎日事務所で顔を合わせていますし、仕事終わりにウェルテに行った様子もなかったので、よく意味が分からないのですが‥‥。ガープ中将が興奮しているので、ちゃんとした話がまだ出来ていなくて」
「あァ?なんだそりゃ」
「さぁ…僕にもサッパリ。 念のため、今朝はリリちゃんを迎えに行こうと思っています」
「ま‥‥時期に分かるかも知れねぇ」
スモーカーは葉巻の煙を吐き出した。天に高く昇っていく。スモーカーは手に持っていた書類を見つめた。
「ちょうどコレも取れたところだ、出航準備整えておけよ」
波はうねりをあげた。スモーカーは強く拳を握りしめた。