COLORFUL WORLD


□第5章:Impending Gold
1ページ/33ページ

じんわりと立ち上る熱気。体中を駆け巡る焦れた甘い疼き。何度も感じた事のある脱力していく儚い香り。
燻る胸の高鳴りは刻々と音を立てて、確実に目の前までやってくる。

衝動は激しく中を突き動かす。波が強く私の中を打ち付ける。その度に、胸がいっぱいになり、淡い色をした幸福感が溢れ出る。人の体温がこれほど心地よいものだと思った事はなかった。
旋律を描くように滑らかな動きは、物足りない隙間を埋めるように美しい色で描かれてゆく。
なんて、鮮やかなのだろう。眩しい程に輝く人々の色彩豊かな感情と表情。時折混ざる、暗然とした色でさえ充実に満ちる。

今まで私がいた世界は特殊だったのだろうか。育った環境は何事も単調に流れ、皆の最期を除けばずっと争いや憂いもなかった。完璧な幸福と言ってしまえばそれまでだが、いつも小さな違和感を胸に抱えていた。少しの不満も複雑な言葉にできない気持ちも、持ち合わせていない。
大好きな人たちだったが、一様に出来すぎている。何をやっても完璧で、ダンスや料理、どれも一切の失敗がなかった。その中で失敗ばかりする私だけが異端のようだったが、誰も特別気にする様子もなかった。

美しい色ばかりで固めらた、私のいた今までいた世界。この暗澹たる色も持ち合わせる色彩豊かな新しい世界を見てしまうと、私の生きていた世界はとても不自然に感じる。なぜ、偏っていたのだろう。

無性にに感じていた、埋められず、答えのない空っぽの虚しさは、いつも胸の奥の方にあったのかもしれない。
しっくりこないような気持ちのずれは、クザンと出会い徐々に納得を得られるようになっていった。
言葉に出来なかった心の虚無はクザンに満たされ、その正体を知る。
あらゆる感情という感情は、私の中で新たに生まれ段々と色を濃くしてゆく。
私の中は、沢山の色に満ちる。
恋をすると、みんなこんな想いを感じるのだろうか。


足のつま先からじわじわと這い上がって来ていた痺れは、脳内の覚醒に向かい頭の中でパチンと弾け、体が震えたのが分かった。
それと同時に目を開けるとクザンの顔が見えた。とても充実した表情で笑みを向けている。巨躯は私に覆いかぶさり、私の太腿を持ち上げている。その先へ目を向けると、硬くて太いクザンのものは私の中へ確りと入り、遠慮なく奥を突いていた。

「お前さん、寝てんのにいってなぁ。」

「うぁっ…!!く、くざん?!」

まだ、思考がぼんやりしている中で何が起きているのかも分からず、体が感じている悦楽の痺れをただ受け入れるしか出来ない。
私を抱きすくめ絡みつきながら揺れると、体中で勢いよく脈を打ったのが分かった。私の頭に口を付けると「おはよう」と言った。
クザンは身を起こすと、腕を天井に伸ばし背中をバキバキと鳴らしている。

次第に胸の鼓動が落ち着ついて来ると、やっと事態を頭の中で理解しクザンに向けた。

「クザン…私が寝てる間にしたの…?」

「我慢しなくて良いって言ってただろ。ふぁ〜・・やっぱり家が一番落ち着くな〜。」

クザンは悪びれもせず、にやりと口角を上げ私を見ると、大きなアクビをして涙目を浮かべた。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ