COLORFUL WORLD


□第4章:Pure White Jealousy
4ページ/29ページ

店を出るとリリは嬉しそうにクザンに笑みを向けた。

「ありがとう!クザン!」

「あらら、お前さん一気にご機嫌になったなぁ。単純なやつ」

リリの髪の先をツンと引っ張る。

「別に機嫌が悪かったわけじゃないよ・・・」

リリはドレスをぎゅっと抱きしめ、顔を半分隠している。
クザンはリリの肩に手を回すと言った。

「そろそろ不機嫌だった理由を教えてくれてもいんじゃねぇの?お嬢さん。」

リリはドレスを強く抱きしめながらクザンを見上げて言った。

「クザンの事も気持ちよくしたいの。」

リリの言っているその意味がクザンにはよく分からなかったが、こんなに嬉しそうにしてるならなんだっていいやと思った。

「じゃ、ついでにヘアメイクもしてみるか。」

美容室に入ると、リリは店員と話をした後クザンに伝えた。

「わたし結構時間がかかるみたいだから、クザンは一度帰って荷物置いて着替えて出てきたら?お店で待ち合わせしよう」

「そうだな、じゃ、終わった頃に迎えに来るよ。」

「大丈夫だよ、お店すぐそこだし心配しなくても。」

確かにこの距離なら大丈夫かと思い、一度家に戻りスーツに着替える。リリのドレスと合わせて黒を基調としたものを着た。

先に店に入っていくと、いつもの酒屋の雰囲気とはだいぶ変わり、お洒落なバーのようなインテリアとなっている。ウエイターがシャンパンを持って店内を回っていて、早速手に取り飲み始めた。

昼間の店員とバーカウンターで話をしていると、店内の客達が出入り口に視線を向けている事に気付いた。店員も息を呑んだ様子で口が開いている。クザンは後ろを振り返ると、リリが店内に入ってきていた。

ヘアメイクをされたリリは、普段の幼さからは離れ、色気を増した女性の姿をしている。髪は複雑にまとめあげられて、細い首は華奢な体を引き立てた。普段履きなれていない筈のヒールの高い靴も履きこなし颯爽と歩いている。

「あ、」

リリはクザンに笑顔を向け、手を振ろうと少し翳す。クザンに近づこうとするが、すかさず回りにいた男達がリリの方へ寄って行き、その道を塞いだ。

「あらら・・・こりゃぁ参ったなぁ・・。」

クザンは黙ってその様子を眺めている。店員がクザンにこっそり話しかけた。

「クザンさん、リリちゃん今日はずいぶんと大人っぽいですねぇ」

「女って装いで随分変わるよなぁ・・・」

「普段のリリちゃんに気付かなくて声をかけている人も多そうですよ・・・。」

店員にそう言われ、気が気ではなかったがが、パッと視線を店内の端にやると、見覚えのある女が佇んでいる事に気がついた。

「ん〜、ま、しばらく様子見てみるよ。俺はその間、違う女と話してこよーっと。」

クザンは店員から離れると、隅の方で静かに立っているその女に近寄る。女の顔は清潔感があり凛としている。よく見ると美人なのだが、シンプルなドレスに身を包みあえて目立たせなくしているように見える。クザンは声を潜め、話をかけた。

「お前、なんだよその格好・・・全然気付かなかったじゃねぇか。」

「ふふふ、良いでしょう?こーゆう格好も似合うんだよね、ぼく。」

「男のクセにこんな女の格好が似合うなんてなぁ・・・。町で会ったら気付かねぇわ。」

クザンは全身を舐めまわすようにジロジロと女を見た。いつもは平らな胸が自然に膨らみを持っている。それが、どうなっているのか思わずそこばかりを見つめる。

「こーゆう仕事は服装で化けられた方が得なんだよ。ま、僕はクザンなら寝ても良いけど〜」

「・・・俺にそっちの気はねぇ。」

クザンはゾッとし、険しい表情をする。

「あは、面白い男。で、早速本題だけど、これ村の人達の一覧。」

女はクザンに数枚の紙を渡す。
そこには「パウダーリム村・名簿一覧」と書かれている。
パラパラと写真を見る。

「えれぇ、みんな顔が整ってるなぁ・・・」

「そりゃあ、好きな造形に出来る訳だから。不細工より美形が良いでしょう。」

「まぁなぁ・・・、でも、アイツの名前も写真も載ってねぇな。やっぱアンドロイドじゃねぇのかな」

クザンはリストに乗っている写真と名前に全て目を通す。女はリリの方を見た。
リリはまだ数人の男に捕まっていて、愛想笑いを浮かべている。
女はそんなリリの姿をジロジロと眺めながら聞いた。

「あの娘と寝てるんでしょ?」

「・・・なによ、いきなり。」

「アンドロイド達は限りなく人間に近い作りだったみたいだけど、体の内側の生殖器だけは付けなかったんだって。意味がないから。」

「なるほどな。じゃあアイツはやっぱ人間て事か。あー、良かった・・・。」

安堵した様子でクザンが口にすると、女はニヤリと笑みを向けクザンを見た。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ