蛸の夢
□「目覚め」
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振り返った彼女は何とも人が良さそうな笑みを浮かべながら俺にキチンと身体を向き直した。
「そう言えば自己紹介がまだだったわね、私はエリシア。よろしくお願いしますね!」
…俺には少し、こいつは眩しすぎるかもしれねぇ…
俺からの自己紹介を求めているのか未だに目線を逸らそうとしない、正直参った。
素直な人間には慣れてねぇんだよ…
「……あー、俺は、エイトフット・ジョー…………よろしく」
「エイトフットさん!素敵な名前ね!」
能天気に笑顔を撒き散らす彼女はさておき、初めてちゃんとした挨拶ってやつをしたかも知れねぇ
「よろしく」なんて俺が言う柄か?
こいつの傍にいると調子が狂っちまう。
「ところで、昨日はどうして私を呼び止めたのかしら?」
人が悶々と考え込んでいる時に限って、核心に触れる話を持ち出してきやがった。
何て話しゃあいいのか、
「…俺の、知り合いに似ててよ……」
こんな見え透いた嘘、すぐにバレる。
誰がこんな取ってつけたような話を信じ…
「そうだったの、私もよく人間違いをするわ!お揃いね」
いや、信じるのかよ。
心の中でツッコミを入れると昨日の事をアースラ様に一体どう伝えようか考えるのが面倒になり俺はもう一度
いい匂いのする布団に潜り込んだ。