蛸の夢
□「出会い」
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地上に着いて、まず一呼吸する。
「…相変わらず息苦しい場所だな、もう海が恋しくなっちまった。」
げんなりと溜息を吐きつつ一人で軽口を叩きながらも歩き出せば、
見渡す限りの人、人、人。
昼の街は人で賑わい、大人も子供も街中に蔓延っている。
人を掻き分け、歩くのもままならない。
「これじゃリクルーティングどころじゃねえよ…クソ人類が…」
来る時間帯を間違えたか、と後悔し始めていた矢先に、
目端に映った人殺しにうってつけ
まさにお目当の自分の代わりに仕事をしてくれそうなガラの悪い大柄の男。
獲物を見つけたとばかりにそちらに早足で歩いていく。
「(こんな面倒くせぇ仕事なんざ一日中やってられっかよ。さっさと契約してアースラ様に届けちまおう。)」
自らの長い脚で人と人の間を華麗に潜り抜け、すぐに男に追い付けば開口一言「おい、人類」そう告げてからそいつが振り向くのを寸分待った。