蛸の夢

□「友達」
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あれから俺は海へ戻り、何とかアースラ様の鉄槌からは上手く切り抜けたものの、
罰として一週間ほど朝から晩まで重労働を押し付けられ、その後はアースラ様の身の回りの世話、爪磨きからタコ足のマッサージまでさせられた。


「…手下って、こんなにキツいもんかよ。」


クタクタになった身体を冷たい地面へ下ろし横になる。
不意に思い浮かぶのは、あの小煩い赤髪の娘。


「………エリシア、」


誰にも聞こえないよう、小さく呟いてみた。
途端に羞恥から茹でダコのように赤くなる、ようにではなく本当にタコなんだが。

仕方ないから明日はあいつに会いに行ってやろうか。と考える内に眠りについた。

(…結局俺は、あいつに甘い……)

その晩、久しぶりに夢を見た。
緑の尾をなびかせ、俺の名を呼ぶ彼女。
その手を掴もうと俺も必死に手を伸ばすのに
触れた瞬間、彼女は泡になって消えてしまった。
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