蛸の夢
□「目覚め」
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「…何だこれ、新手の嫌がらせか?」
俺はてっきりゴミの詰め合わせでも渡してきたのかと思い、こいつも面白い事すんじゃねぇか…もしや、こいつには才能が…と一人でほくそ笑むも
次の言葉で全て打ち崩された。
「クッキーよ!エイトフットさん、食べられるかしら?」
「…あ゛?」
一瞬、何を言ってるのか分からなかった。どうして一晩泊めた男に菓子なんか渡す必要があんだ。
「私たち、もうお友達でしょう?だからクッキーを焼いたの!食べてくれると嬉しいんだけど…」
俺の反応が悪かったからか尻尾を垂らした子犬のようにこちらを見つめてくる。
「……まぁ、貰っといてやる。」
どうやら勝手に友達にされたらしい、普段なら目の前で捨ててやる所だが、どうしてか彼女を悲しませたくないと思った。
「俺行くわ。」
短く伝えると彼女は既に元気を取り戻したのか満足そうに見送ってくれた。
「必ずまた来てね!…エイトフット!せっかくお友達になったのに、私、まだあなたに名前を一度も呼んでもらってない!」
「…気が向いたらな。」
さて、さっさと戻ってしこたま怒られるとするか。
俺は一人で暗くなった街を背にし、海へと歩き出した。