short story

□夢
1ページ/4ページ



秋も深まってきたある日の朝、真優が2階の自室で起きると、1階のリビングから美味しそうな匂いがした。


「あら、おはよう。真優。」

そう声をかけた真優の母・中里菜々子は、エプロン姿で娘の方を振り返った。

「せっかくの休みなんだから、ゆっくり寝てたら良いのに...。」
「たまには、朝ごはんを作って、あなたと一緒に食べたかったのよ。」

以前は、自宅から5分程の総合病院で看護師長をしていた菜々子だったが、今は米花町役場で保健婦として働いている。以前に比べれば、仕事の量は減ったものの、シングルマザーとして働くのは、どの職場でも対して変わらなかった。そのため、週1の休日は、真優と菜々子にとって大切な時間でもある。

「さぁ、出来たわよ。お母さん特製パンケーキ!」
「わぁ...!久しぶりね、お母さんのパンケーキ!いただきます!」

真優は、席に着いて、用意されていたナイフとフォークで、焼きたてのパンケーキを小さく切って口に運んだ。

「美味し〜い!やっぱりお母さんのが一番美味しいよ。」

真優が美味しそうに食べるのを、菜々子はにこやかに見つめていた。
真優は、少しの間、菜々子の顔を見つめて言った。

「ねぇ、お母さん。何かいい事あった?」
「え?どうしてそう思うの?」
「だって、いつもより嬉しそうだもの。それになんか楽しそう。」

真優の答えに小さく笑って、菜々子は、実はね...。と話し始めた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ