短編集
□細くて長いチョコレート菓子の日
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「なぁなぁ、今日なんの日が知ってる?」
髪を金にそめた如何にも馬鹿な親友が、阿呆を丸出しにしながら俺に話しかける。後ろに隠しているのは、例のあの菓子だ。
「知ってるぞ。」
読んでいる本から目を離さずに、答える。
「第一次世界大戦停戦記念日だろう?」
すると親友は目に見えてテンションが低くなった。とてつもなくわかりやすい反応はいつもの事。...4月に彼女が出来たと嘘をついた時は泣きそうで。おめでとうなんて白々しすぎて少し可愛そうなくらいだった。が、だからこそ虐めたくなるだのが。
「...なんだそれ、男子高校生のセリフじゃねぇよっ!」
ふざけたように笑いながら、菓子の箱を突き出す。
「今日は、ポッキーの日だろ!」
わざわざ買って来たのだろうか。
「......菓子メーカーの経営戦略にまんまと踊らされた馬鹿、というところか?」
「おれは馬鹿だけどいまお前がバカにしたって言うのはわかるぞ」
チョコレート菓子を箱から取り出し、袋をさきながら言う。
そして1本を咥えた。
冗談っぽく、親友は
「ポッキーゲームでもする?」
こいつは、馬鹿だ。
「あぁ、いいぞ?」
「えっ...」
親友が咥えたポッキーの先を、舌で捉える。チョコレートがいつもより甘く感じた。そのままサクサクと食べ進めると、案外まだ幼い親友の顔が、とても近くなる。
頬は紅く染まり、腰は引けている。俺は、親友の腰を抱き、さらに唇を合わせた。咀嚼途中だった甘い菓子が、口腔内で混ざりあう。
唇から漏れる熱い吐息を塞いで、舌を絡める。時折静止を乞う様に、ワイシャツを掴んでいた親友の手は、くたりと背中にまわされていて、
親友は息も継げないほどになっていた。
ようやく唇をはなすと、銀糸がとろりと唇同士を繋いでいた。気持ち良さから涙目になって口元を拭う親友は、とてつもなく卑猥だった。
「なに、すんだよ...」
否定的な言葉とは裏腹に、親友は頬を染めて気持ち良さそうにしている。
「ポッキーゲームするって言ったのはお前だろ?」
つ、と指で首をなぞると、ひくりと身体がふるえた。
「だからって、あ、あんなキスする必要ないだろ!」
「......気持ち良かった癖に」
「......っ!」
煽るように言うと、さらに頬を赤く染め、言う。
「...だってお前が、好きだから」
やっと白状した。ずっと前からわかっていた事だったが、本人から言われたらこうも煽られるとは。
「俺も、好きだ」
親友は泣きそうな表情から一転、照れたように微笑んだ。
「嘘じゃねぇ?」
「本当だ」
「浮気したら許さねぇ...」
「...こっちのセリフだ」
そしてまた、キスをした。
よく分からないend☆