短編集

□ただ、ただ、暗い井戸の中
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ねぇきみ

きみは何をしているんだい

そうか

死にたいのかい

だからといってそこに飛び込むのはいけないよ

そういうおまえはだれかって?

僕は僕だよ

それ以上でも以下でもないさ

まぁそんなことはどうでもいいことだよ

死ぬ前に僕の話を聞こうだって?

どうしてまたそんなことを言うんだい

お前がもっと不幸なら俺は死なないって?

それならお話ししようじゃないか

そうだね

まず最初に

僕のいまの気持ちを例えるのならば

暗い井戸の中

三人で一緒に居るんだ

一人は僕だよ

二人は黒くて長い髪の女の子

三人は骨格だけの男の子

その三人で楽しく唄うんだよ

暗い、暗い、水の中でね。

おや

どうしたんだい

きみ

いやに顔が青白いじゃないか

ほら

どうだい僕の話は

はは



もしかして忘れていたのかい

一人目に殺した君の憎い彼はもう骨になっていたよ

二人目に殺した君の想い人は美しかった髪を残すだけだったよ

三人目の僕は

哀しかったよ

僕はこれでも初めて人を好きになったんだ

だからいいんだ

三人殺した君が

妻を娶って

子供を作って

いい位について

僕達を忘れていたとしてもね

だからね

この暗い井戸で

僕達と一緒に

ずっとずっと

居ようね?

どうして泣いて居るんだい



ふふ

謝っても今更遅いよ

僕は

もう許さない

...ゆるせない

だからね













グチャッ
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