短編

□天の川の先に…
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「晴れてるかが問題だけどな。それならそうと言えよ、散歩くらい幾らでも付き合ってやるから」


『ニュースで今日は晴れてるから綺麗に天の川が見えるって言ってたし大丈夫!』


※※※※※※※※※※※※※※※


家を出て、ゆっくりゆっくり、歩いていく。


『やっぱり綺麗だね…ちゃんと会えたかなぁ、彦星様と織姫様…』


「……オレと、1年に一度しか会えなくなったらお前はどうする?」


思いもよらない質問だった。


一郎と1年に一度しか会えなくなるのは嫌だ。


そう考えた途端、涙がポロポロと流れた。


「もしもの話だろ?オレはお前から離れるつもりねぇから泣くなって…」


オレが悪かった、と優しく抱きしめてくれる彼。


彼のそういう所が私は大好きだ。


『あのね、一郎』


「ん?」


『……愛してる、』


そういうと耳元で彼がフッ、と笑みを零す声が聞こえた。


「オレはお前の百倍、お前を愛してる」


なんというか、擽ったい。


『それ、私以外の子に言ったらアッパーの刑だからね』


「言わねぇよ、お前のパンチ痛いし。何たって馬鹿力だからな。」


『そんな事ないよ、私はか弱い女の子。』


馬鹿力なんて失礼な、と内心思いつつそれっぽい女の子を演じる。


「お前の何処がか弱い女の子なんだよ。どう見たって珍獣ハンターだろ。ほら、チーターとか追いかけてそうな奴」


『うっわ、酷!傷ついた!』


もう知らない、と背を向けて歩き出す。


「悪かったよ、冗談だって」


『ずっと思ってたんだけどさ。一郎ってファンサービス悪くない?試合の後、ニコリともしないじゃん』


「……ファンサービスしてもいいならするけど。お前嫌がりそうだし」


『何で?』


私が嫌がる事、なんてあるのだろうか。


応援してくれるファンにお返しをするのはスポーツマンとして当然だ。


「キャーキャー言う奴が居るだろ、一部」


『……やっぱりダメ、ファンサービス禁止』


この人を思いのままに出来るのは私だけ。


ちょっと性格の悪い織姫だけど、それは彦星を愛するが故…


見上げた天の川の先に、幸せそうに笑う織姫様と彦星様が見えた様な…そんな気がした。





➡ あとがき。
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