短編

□雨上がり
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──── ホカホカに温まった彼が満足気な顔をして、お風呂場から出てきた。


一方私はというと、先ほど水浸しにされた廊下を拭いたタオルを持って不機嫌そうにソファーに埋もれている。


「なに怒ってんだよ」


ジャージに身を包んだ彼は水の滴る髪をタオルで拭きながら無理矢理に私の体を起こしてはソファーの半分を占領した。


『別に怒ってない。…というか、何で濡れてたの?』


「予報が昼から降るって言ってたから午前はロードワークに出てたんだけど…いきなり降り出したからな。」


試合を控えている彼の頬は、こけている様にも見える。


私は彼の試合を見に行く事は合ってもボクシングのルール何てものは知らないし、彼に出会うまで興味も無かった。


『……最近、ちょっと頑張り過ぎなんじゃない?』


ボクシングは練習は勿論、減量が過酷なイメージが確かにある。

でもそれがどんなものか何て私には分からない事だ。

けど、その私にも分かるくらい、減量は彼を苦しめている。


「頑張るも何も、試合前には必ずやってる事だからな。もう慣れたよ」


フッ、と自嘲する様な薄笑いを浮かべる彼を見て私は心が痛んだ。


『今日、ジム行くんでしょ?』


ジムを移籍して随分と時は流れた。


人付き合いが得意ではない彼も少しずつジムの人に慣れて来ているらしい。
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