短編
□Date
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大事にされてない訳じゃない。
「好き?」と聞けば「好きだ」と返してくれるし、腕を広げれば抱きしめてくれる。
不器用だけど私を精一杯愛してくれる彼に満足はしているが…
不満があると言えば、デートは月に1,2回あるか無いか、という点だ。
ボクシングを職にしている彼を困らせたくはない…が、彼女としては好きな人と色々な所に出掛けてみたいものである。
「……考え事でもしてんのか?」
『昨日、よく眠れなかったから』
苦笑いを浮かべた私の先には多くの人達が居る。
毎度お馴染み、ボクシングの試合でも見に行くのだろう。
スリリングな物が苦手な私にとってはお化け屋敷に1人で放り込まれる様なものだ。
『今日はどこ行くの?』
「……あそこ。」
そう言って指差す先には新しく出来たばかりのショッピングセンター。
オープンして一度は行きたかった夢の場所だ。
『え…!?ボクシングの試合じゃないの!?』
「本当は気になる試合があったんだけど、余りに真剣な顔して雑誌眺めてたからな。」
クス、と小さく笑みを零す彼に私は唖然とするばかり。
まさか、まさか、あの彼がボクシングよりも私の事を考えてくれていたなんて…
「……うぅ…、」
気づけば私は涙ぐんでいた。
彼は驚いた顔をすれば大丈夫か、と心配そうに私の顔を覗き込みながら私の背を優しく摩ってくれた。