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□傍に…
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「ごめんなさい、テヒョニヒョン。明日行けなくなっちゃった」
明日は久しぶりのデートだと楽しみにしていたところに、グクからの電話。
お互いに仕事が早く終わった日や週末にどちらかの家に泊まりに行ったりなど、会う機会は結構あったけど、昼から出かけることはほぼなくて、男同士で気を使うとは言え、たまには昼のデートにも行きたいと思っていた。そしてやっときたチャンスに実は数日前から何だか浮き足立って、洋服選びなんかをしていた。
正直、本当に残念だし、来れなくなった理由だって知りたい。でも、グクがあえて理由を言わないってことはきっとあまり話したくないことなんだろう。
「しょうがないね。また時間あるときに出かけよう?」
申し訳なさそうにするグクにもう何も言えなくて、頑張って理解のある恋人を演じた。
そして次の日、グクと出かける予定がなくなっちゃってもういっそ一日家でゴロゴロしてようかとも考えたけど、じっとしてると余計なことばっかり考えちゃうから外に出ることにした。
「おいテテ!人の話聞いてんの?」
急な呼び出しにも二つ返事で来てくれて、おそらく俺が落ち込んでいることを察した上で明るく振舞っているのは、高校からの親友であるジミンだ。
グクと知り合ったのはグクが同じ部署の後輩として入ってきたときだから、ジミンはグクに実際にあったことはない。でも最近の話題といえばグクのことだし、いつも相談にのってもらってるから、あんなことやこんなことまでジミンには全部筒抜けだ。
「なあジミン、今日なんでグク来れなくなっちゃったのかな。仕事かな。家族に何かあったのかな」
「もーそんな気になるんだったら本人に聞いちゃえば?会えないってだけで、一日連絡も取れないってわけじゃないんでしょ?」
男二人でカフェに入り、まるで女子高生のような会話を繰り広げている様は周りから見ると少し以上かもしれないが、当人たちはいたって真面目だ。
「ん〜…理由を聞いたところで、結局グクに会えないならいみないもん」
「でも、今のテテの感じは、あえないことってよりもなんで会えないんだろうってことに対して悩んでるように見えるぞ」
そうなのかなぁ。でもたしかに、言われてみればそんな気もする。一週間以上会えないことは珍しいことじゃないけど、今日はすごく楽しみにしてたから。僕はこんなに楽しみだったのに、グクはそうでもなかったんだって考えて少し落ち込んでたような気がする。
「やっぱりジミンは、なんでもわかっちゃってすごいね!」
「テテはわかりやすいんだよ。すこし元気も出たみたいだし、どっか外に…」
「うん!いこっ「まって、やっぱもうちょっとゆっくりしよう!」
ジミンが立ち上がりかけたので、それに習って立ち上がろうとしたら、ふと外を見たジミンに慌てて腕を掴まれて席に戻された。
「なに?もういくんじゃないの?」
急なジミンの変化に戸惑いながらも聞くと、
「あ〜うん、でももうちょっとゆっくりしよう!ほら、まだ飲み物少し残ってるし!」
急に様子がおかしくなったジミンを変に思い、先ほどジミンが見ていた方へ視線を向ける
遠くで、あっテテみちゃだめだよっていうジミンの声が聞こえた気がした。
ジミンが隠そうとしていた理由がよくわかった。確かに見ないほうがよかったかも。
視線の先に見えたのは、交差点で信号待ちをしている愛しい人の姿で、それだけならいいんだけど、隣には後姿だけでも上品な雰囲気の華奢な女性が立っていて、信号が青になると同時に、グクがその女性の腕を優しく支えるようにして歩き出した。