観察録

□破壊
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 平和な日常というものは酷く脆く、呆気なく崩れ落ちていくのだ――

 幼いながらも、ボクはそう思った。



 ◇

 出雲直弥(ナオヤ)

 それがボクの名前。出雲家は、そこそこ異能力に長けている家系でもあり、その力を隠しながら日常を過ごしていた。

 異能力者は、不気味がられたり、避けられたりすることが多い。でも、幼いボクにはその理由がわからなかった。

 ただ、両親に言われた通りに異能力を隠していた。それに、出雲の人間であるということも。

 そうすれば、友達も出来るし、誰からも離されることはない。だから隠すことは当たり前。ボクはそう思っていた。




 ◇





 ある日、両親が事故に遭った。


 あまりにも、突然の出来事で、学校の先生から聞いた時、ただただ呆然としていた。



 ――そこから歯車が狂い始める




 幸い、一命は取り留めたものの、未だに意識は戻らない。そんな毎日が続く。




 ――じわりじわりと、侵蝕するように




 学校の帰りには必ず、意識が戻らない両親が入院している病院に通い、毎日見舞いをしていた。



「あら、直弥君。今日もお見舞い?」

「うん。…今日もまだ、起きてない?」

「…ええ……。」

 毎日通ったお陰か、顔見知りになった看護師の人とそんな会話をしていると、背後から足音が聞こえた。



 ――それは、崩壊へのカウントダウンでもあり



 何だろう、と思って振り返ると、白衣の男の人が立っていた。手には分厚いファイルがあり、それを開いてボクとそれを何度も交互に見ている。

 キョトンとそれを見ていると、バタリという音がした。音がした方を見れば、先程まで話していた看護師さんが寝息をたてて眠っていた。
 そのことにボクは首を傾げる。ついさっきまで、眠たげな様子もなく普通に会話していたのに、一体何故?


「出雲直弥君だね」

「え? そ、そうですけど…」

 いきなり、その人に話し掛けられた。
 困惑しながらも、頷けば、いきなり腕を捕まれる。
 ぎょっとして、すぐに離れようとしたが、急激な眠気に襲われる。


 ――同時に、それはイツキが生まれるまでのカウントダウンで



「な……に…」

 意識が途切れる直前、男の人が笑っている気がした。

 ――確かにボクを嗤っていた



 
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