長編〜T〜
□普通の記者ではないんです
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彼女の言葉に、レナード達はそれぞれ顔を見合せ、ニックが応えた。
ニ「アダリンドが、ジュリエットに化けて、俺と警部に近付いた。」
「……アダが?また……どうして」
ニ「恐らく、アカネの代わりに」
「娘を取られた私に変わって、復讐をしたってこと?……ニックは、何を」
ハ「グリムの力を奪った」
「そんな……本当?」
驚いたようにニックを見れば、彼は肩をすくませた。
「そう……ショーンは?何をされたの?」
レ「まぁ、大したことじゃない。アカネは何も心配するな」
安心させるためか、優しく額にキスをされるも、姉として罪悪感があるのか、ニックの事を見た。
「ごめんなさい、ニック。妹のせいで……」
ニ「アカネのせいじゃないから、気にしないでくれ」
そう言えば、今まで黙って聞いていたエリザベスが、レナードとアカネを交互に見て言った。
エ「口を挟んで申し訳ないけど……娘って?」
「えっ、ショーン、話してなかったの?」
レ「あぁ、すまない。色々と忙しくて……
ついこの間、娘が生まれたんだ。」
エ「あら、名前は?」
「ダイアナって言うの。」
レ「王家がダイアナを狙っていることを知って、ニックの母親に預けたんだ。
ただ、それをアカネには知らせたくなくて、何も言わずに引き離した」
エ「何も言わずに?それは、辛かったでしょうに」
「最初、ダイアナが居なくなった時は本当に悲しかったし、勝手に連れていったショーンやニック達に怒りを覚えたけど……
でも、後からロザリーに事情を聞いてからは納得したわ。いずれ、戻ってくるって考えたし。ただ、アダは優しいから……私の代わりに復讐したのだろうけど、やりすぎたわね。私の方からも、連絡しておく。
エリザベスに、ダイアナを見せてあげられなくて辛いわ。いつかきちんと、見せるから」
エ「楽しみにしてるわ。じゃあショーン、私はそろそろ帰るわね。」
レ「下まで送っていく。…少し出てくる」
「わかった。……エリザベス、今回は本当にありがとう。治ったら、家に誘うわ」
アカネがそう言えば、エリザベスは微笑み、軽く抱きしめてからレナードと共に病室を出ていくのを見届けると、彼女はニックの事を見た。
「ニック」
ニ「ん?」
「あなたに、聞きたいことがあるの。その為に、昨日家に行ったのよ」
ニ「俺で力になるなら」
「ありがとう。
……今ね、あるお宝についての記事を書くために、取材してるんだけど……王家が狙っているお宝って、何か知ってる?どうやら、グリムが関係してるらしいんだけど……」
そう聞けば、ニックはハンクと顔を見合わせ、口を開くも直ぐに閉じた。
「知ってるのね?だけど、話せない?」
ニ「すまない。」
ハ「それを知ってどうするつもりだったんだ?」
「どうって……正直に言えば、記事にはしないつもりよ。……というのは、最近、私が働いてる新聞社、何かがおかしいのよ」
ニ「何か?」
「そう。実際何かが起きてるわけじゃないんだけど、そう感じるのよ……
ねぇ、記事にはしないし他言もしない。何をやっているのか教えて?もしヘクセンビーストとして、力になれることがあれば、喜んで力を貸すわ」
小声で部屋からこちらに戻ってくるレナードに気付かれないように言うと、ニックはまた連絡するとだけ告げれば、ハンクを連れて病室を出て行った。
それと入れ違いに、レナードが入ってくると、アカネは微笑んだ。
「おかえりなさい」
レ「すぐそこだろう?……それより、身体の具合は?だいぶその体勢だったから、疲れただろう?」
上体だけを起こしていたアカネは、少しだけと答えるとベットを少し倒した。
「……心配をかけて、本当にごめんなさい」
右手から伝わる、レナードの体温にアカネが素直にそう言えば、彼は優しく笑った。
レ「君が血を流して倒れていた時は、本当に心臓が止まるかと思った」
「私も、撃たれて…意識が遠くなりながら、ショーンの顔がぼんやりだけど映った時、これで終わりなのかなって、感じた」
左手をレナードの手に重ねれば、彼は彼女を見つめると、コートのポケットから小さい箱を出し、それを開ければアカネの前に見せた。
レ「本当は、もっときちんとした場所で見せたかったんだが……」
「…っうそ……」
レ「君を失いたくない。私と、結婚して欲しい。」
真剣な顔で、病室というムードの欠けらも無い場所で、プロポーズを受けたアカネは、涙を流しながら何度も頷く。
「もちろん……もちろんよ、ショーン……私で良かったら、あなたのそばに居させて」