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□雨の日には甘い痛みを
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ポツポツと朝から降り続く雨の音
編集するマウスの音とたまに流れる俺のうるさい声
俺は雨の日が大嫌いだ
小学生から中学生の頃よりはマシになったと思うけど
今ではもう雨が降って特別嫌な日とかはない
それでも雨の日が嫌いで、なにより頭が少し痛むのだ
どこかの小学生は今日の天気に怒っているのだろうが、少しズキズキとする痛みを抱えながら俺はほんのちょっぴり浮き足立っている
なんたって今日はフジが来る日だ
雨の音を引き裂くように
ピンポーンとドアホンが鳴って
ガチャガチャと玄関が開く音がする
フジには合鍵を渡していてドアホンを鳴らさなくてもいいと言っているのに
いきなり俺が入ってきたら嫌でしょう?
と必ずドアホンを鳴らしてくれる
あいつらしい気配りだと思うから好きにさせている
そして俺の部屋に入ってきて早々
あれメガネ?どしたの?
なんて。
単にコンタクトの期限が切れたのに変えのコンタクトを買ってなかった、それだけ
けどなんだかそれを言うのは癪に障ったから
気分
と返す
懐かしいね、これで金髪だったらなあ
目を細めて頭をぽふぽふと叩いてくる手に、いつもならやめろと避けるが今日はなんだかこのまま頭を撫でられたい気分だったから擦り寄ってみる
少し面食らったような顔をしてるけど気にせず擦り寄る
昔の俺の方が好き?
そんなわけないじゃん!今のキヨが好きだよ
多分これからもずっとその時のキヨが好き
いつものヘラヘラとした笑みを崩さず言うコイツにいちいち心を揺るがされるのが癪に触るがこの雰囲気をぶち壊したくなかったからそのままでいてやる
そしたらオロオロとし始めて
頭痛いから甘えたさんなの?
薬あるけど飲む?
こいつの表情はいつ見てもコロコロ変わるなと思いながら、離れていこうとする手をつかむ
いいから、離れんな
頭撫でてろ
頭をさらに近づけると
フジの周りに花がふわっと咲いたように幸せそうな顔をして笑った
頭痛のせいにして
こんなに甘えられるなら
雨もいいかもしれないな、なんて