探偵たちと!

□昴さんの楽しいお料理教室
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やあ、妙地那前です。
ところでみんな、シチューに入れる肉は何を使ってる?

俺今まで、どの家庭でもシチューには鶏むね肉だと思ってたんだが、実は家庭によってけっこう違うんだな。鶏もも肉の家庭もあれば豚肉使う家庭もあるらしいし、鮭とかホタテとか入れる家もあるみたいだ。
肉以外でも、ブロッコリーを入れる家と入れない家、牛乳を使う家と生クリームを入れる家、隠し味に味噌とか入れる家。
なんかそういう、メジャーな料理だけどそのなかでアレンジされて生まれる家庭の味って、いいよな。
結構好きだな俺。


「ところで昴さん」
『どうしましたか那前くん』
「なんで俺、休日の夜に人ん家で昴さんとシチュー作ってるんでしたっけ」
『それは蘭さんたちに、キミと一緒に料理をしてほしいと頼まれたからですよ』


ことのあらましは1日ほど遡って、平日のお昼休み
便所から教室に戻る途中の廊下で蘭ちゃんたちに捕まった俺は、理不尽な怒りをぶつけられた。
詳しく言うなら、先週から新一の家に沖矢昴さんが居候することになったと俺が知っていながら、何故それを彼女たちに教えてくれなかったのか、みたいなことを蘭ちゃんに問い詰められ、何故あんなイケメンの知り合いがいたと教えてくれなかったのか、みたいなことを園子ちゃんに問い詰められた。
後者はともかく、前者については反論させていただきたい。

「え、それ普通新一がするべきじゃないの?あいつ家主でしょ?」
『新一が私たちにそんな気を利かせると思う?』
「思わない……」

何でも、先週なにも知らない蘭ちゃんたちが新一の家に掃除に行ったとき、歯磨き中だった昴さんを不法侵入者だと勘違いして一蹴り入れてしまったんだとか。痛そう。昴さん本人は許してくれたらしいが、蘭ちゃんが定期的に工藤家を掃除しに行っていることを知らないはずがない新一、又は昴さんと知り合いだった俺が前もって教えてくれていればあんな失礼なことしなかったのに、と言うのが彼女の言い分だ。
実際その通りだと思う。
でも俺は悪くない。
悪くないったら、悪くない。





『私たち考えたんだけど那前、昴さんに料理教わったらどうかしら!本で読んだことあるのよ、何かを修得するには同性に教わった方が共感してのみ込みが早くなるって』
『ま、那前がひとりで作るよりよっぽど安心ってことよ』

「……なるほど、一理あるね」

なにやら、蘭ちゃんと園子ちゃん二人で昴さんの話をしていたら流れで俺の料理の話になって、どうせなら一緒に料理させてはどうかという結論になったらしい。心の痛いところに刺さるが説得力のある話に楽しみになってきたが去り際蘭ちゃんが言った、じゃあ明日迎えに行くから、という一言で慌てて二人を引き留めた。

「いやいや、いきなり行ったら迷惑でしょ?昴さんにも予定とかあるだろうし」
『あぁ、それは大丈夫!コナンくんに聞いてもらって、明日なら大丈夫って言われたから』
「え、俺の予定とかは聞いてくれないの?」
『明日は部活無いでしょ?那前何かすることあるの?』
「ないけど」

また俺の知らないところで色々決まってたのが腑に落ちないだけであって…なんでもないよ蘭ちゃん園子ちゃん……そんな「え、那前って部活と新一と真くん絡み以外で休日外に出ることあるの?」みたいな顔やめて……


────────

そして今日の夕方わざわざ俺んちまで迎えに来た蘭ちゃんとコナンくんに工藤邸までドナドナされて、今に至る。
あの二人、俺を昴さんに確保させたら小五郎さんと三人で外食するんだとかで早々に帰りやがったんだが、あれだよな…絶対そこで何かしら事件か事故でも起きるんだろうなぁ…そんで巻き込まれるんだろうな…

『実はまだ食材を買っていないんです。今からお買い物に行きましょうか、那前くん』
「ウ,ウス……」

しかもこの昴さん、何故かノリノリみたいだった




買い物中、昴さんに栄養価の高いブロッコリーの見分け方を教えてもらえた以外、特に変わったことはなかったな。
問題は調理だった

「ジャガイモの芽ってどれだ…」
『とりあえず窪みらしいものは全部くりぬいてみればどうでしょう』

『那前くん、さっきから涙がとまらないのですがどうしたら良いでしょう』
「玉ねぎ切るときは口で息するといいってテレビで言ってましたよ」

『焼き目と焦げ目って何が違うんでしょうか』
「うーん?…一緒なんじゃないですかね」


そしてなんやかんやあって完成したシチューがこちらになります。
って見えねえか
なんかね、すげえ微妙な感じ

皮剥きされた具材のゴツゴツ具合といい、カットサイズのゴロゴロという擬態語が似合う程のまあまあな大きさといい、昴さんの料理は彼の柔和な見た目に反してわりと男らしいと思う。
これでちゃんと火が通っているのか心配だが、調理中の昴さんは迷いなくこの大きさにカットしてたんだから、きっと大丈夫なんだろう。

『「いただきます」』


味わってひと口目
ほうほう
なるほど、これは……

「…昴さん、いつもこんなの食べてるんですか?」
『そうですが』

一欠片で二通りの食感が楽しめるジャガイモとニンジン
明らかに焼きすぎてパサパサになった鶏肉
米要らねぇんじゃねぇかと思うほど薄味のスープ

俺はこの味を知っている
半年前に俺が作ったシチューと、寸分違わぬ味だ。
つまり、まずい

「これですね、女性陣からしたら失敗に入るっぽいです」
『なるほど、どおりでいつもおかわりする気にならないと思いました』

いやまぁ、食べられないことなない。ないんだけど……
どうせならもうちょっと美味しいやつが食べたいよねって話で

「……頑張りましょう」
『…ですね』


俺たちの料理上達への道は、まだまだ遠いみたいだ



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