探偵たちと!

□穏やかな日常(市民に限る)
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探偵たちと!とかいう題名のくせに全然探偵たちと絡んでない……許してヒヤシンス



休日散歩に行こうと家を出たところで近所のおばさんに捕まった。

『あらぁ那前くんちょうど良いとこに!これ杉浦さんに渡して欲しいの!熊田さん家のお向かいさんだからすぐわかるわよ!』

育ち盛りの若者のくせに料理が一向に上達しない俺のために、と時々煮物の詰め合わせ(めちゃくそ旨い)をもらっている手前下手に断れなかった結果、こうしておばさんのパシリとして荷物とか回覧板とかを近所やおばさんの知り合いに届けに行くことがたまにある。
おばさん強し。

今回もやることは同じようなものだが、届け先の杉浦さんってのは初めて聞いた名だ。でも熊田さん家は知ってるから迷いはしないかな。昔だけど帝丹小から新一の家に行くときたまに通ったし。……あれ、そう言えば熊田さん家の向かいってたしか……

「…ってやっぱアパートやないかーい」

何となくそんな気はしてたんだよな…『木馬荘』って…木造だから木馬荘?安直だ…ポスト…は部屋番号しか書いてないか…もしや一部屋ずつまわるのかこれ?え、キツ……

『おや、お早うございます』
「あ、お、お早うございます…あの、杉浦さんって今いらっしゃいますか?」

門前で狼狽していたところに声をかけて来たのは、花壇に水やりをしていた恐らく木馬荘の住人であろう眼鏡のイケメンさん。大家さんかな。

『あぁ、大家さんのことですね。1階の突き当たりにある部屋にお住まいですよ』
「そうですか…ありがとうございます」
『いえいえ』

大家さんが杉浦さんだった…じゃあ大家さんじゃないのに花壇の整備してるってことか、偉いなあの人。

『わざわざすまないね。ポストに放ってくれても良かったのに、真面目だね君は』
「アハハ…なるべく早いほうがいいかなって」
『お兄ちゃん、郵便屋さんなの?』
「今だけね」

それ以降、木馬荘に来るのは杉浦さんに届け物とかするためだけのはずなのに、何故か某六番隊隊長兼四大貴族の彼と同じ声をしている眼鏡のイケメンとの交流も始まってしまった。

『おや、おはようございます』
「あ、おはようございます」

まぁ会ったときに一言二言かわすだけだけど。

「真面目ですね、朝の7時からお花の水やりしてるなんて」
『えぇ、日が高くなってしまうと地中の温度が上がってしまうので。』
「へぇ」

彼は大学院生らしく、論文がよほど行き詰まらないかぎりはひまを持て余しているんだとか。
羨ましいな

『そう言えば、お互い名乗ってませんでしたね。僕は沖矢昴といいます』
「……キャ、スバル…さん?」
『沖矢昴、です。あなたは?』
「あぁ、妙地那前です」
『那前くんとお呼びしても?』
「え、ど、どうぞ…」

にしてもこのキャスバル、妙になれなれしいな……


キャスバル…あ

「あー分かった!そうだったよな完っ全に忘れてた!」
『な…なにか用事でも?』
「こっちの話なんで全然大丈夫です」




──────────
side:江戸川



少年探偵団の依頼のために木馬荘に行ったはずが、普通の刑事事件に出くわした俺たち。
幸い犯人の特定は直ぐに終わったが、アパートが全焼してしまったせいでここの住人の住む場所が無くなってしまった。

『お、日記に続きがあるな…』
「え、なんて書いてあるの?弓長警部」
『えぇっと…【赤のお兄さんははしるのがはやい。このまえも学校に行くとちゅうで風みたいにはしってるのを見た。赤い人とも仲よしみたい】……新しい奴が出てきたな』

文章から考えると、ここに書いてある“赤のお兄さん”と“赤い人”ってのは別人だな。
木馬荘の住人は杉浦親子を除けば3人だけ、それも各々色の判別は済んでいる。
つまり“赤のお兄さん”は完全な第三者
事件との直接的な関係は無いが、赤い人……沖矢さんと交流があると言うのは気になるところだ。

「沖矢さん、“赤のお兄さん”に心当たりとかない?」
『恐らく、彼のことかと。この時間ならばそろそろ…』

そういって道路に顔を向けた沖矢昴さんを見習い、彼と同じ方向を見つめてみる俺たち。
そして向こうから歩いてきたのは……

『……え、何?』
「那前兄ちゃん、杉浦さんに届け物とかした?」
『あぁ…近所のおばさんに頼まれて何度か』
「ここにいる沖矢昴さんと面識は?」
『え、朝に一言二言喋るくらいかな』

いやお前かよ

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