探偵たちと!

□開催する
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だいたいの学園祭は1日目よりも2日目のほうが盛り上がる。
何故なら、2日目は一般解放で校外からも人がたくさん来るからだ。
俺も昨日のことながら、1日目のことはあんまり記憶にない。
あ、そう言えばコナンくんが退院したらしくて蘭ちゃんが1日中そわそわしていた気がする。
あいつは今日来れるのだろうか。
べつに来なくてもいいけど。

『妙地、そろそろ体育館行く時間じゃないか?』
「うわマジか。行ってくるわ」
『俺たちも後で観に行くから、気張ってけよー』
「自分たちの出し物に集中しとけ!来んな!」

ちなみに我らA組の出し物は縁日風のゲームコーナーだ
点数制になっていて、5つあるゲームをまわり、最終得点が100点中70点以上ならお菓子が、満点ならお菓子に加え「I'm a perfe○t hum○n缶バッチ」が貰えるってシステムになっている。
難易度がちょうど良く設定されていて、けっこう好評らしい。
まあもちろん俺は満点だったわけだが。

昨日への追憶はそこそこにして、行き交う老若男女を掻き分ける。
どうにか体育館前に行くと、入り口では園子ちゃんが仁王立ちで待っていた。
なんて勇ましい、流石は元騎士役。

『那前ってばおっそーい!30分前には来ててって言ったのに!』
「30分前って、まだ10秒しか過ぎてないじゃん」
『はい、とやかく言わないで行った行った!』

背中を園子ちゃんの人差し指で突かれながら、体育館の舞台袖へ急かされる。
これは地味に痛いから、嫌でも進まざるを得ない。
痛みに耐えながらちらりと横目で客席を見ると、30分前だと言うのにちらほらと人が座り始めている。
本番は着々と迫っていた。

たどり着いた舞台袖ではB組の生徒が準備や仕上げできりきりまいだ。
忙しいはずだが、みんなの目は輝いている。
いやぁ、若いって素晴らしい。

『あ、来た来た。待ってたよ那前くん』
「遅れてすみません新出先生」

冷たい園子ちゃんとはちがい、舞台袖で俺をあたたかく迎えてくれたのは新出先生だ。
一緒に騎士役を練習しているうちに、いつの間にか苗字呼びから名前呼びに昇格してもらった。いいだろ。

『いえ、まだまだ時間はあるから気にしなくていいよ。今のうちに段取りの確認したいんだけどいいかな?』
「大丈夫です。じゃあ、俺が3人目の兵を胴切りして、剣をぶんってやった瞬間から4秒暗転するんで、」
『そこで僕と那前くんが交代する。4秒だね、立ち位置とか気を付けないとな…』
「交代の確認でハイタッチとかします?手袋だから音は出ませんし」
『フフ、いいねそれ』

冗談半分でいえーいとかるく手を合わせると、新出先生の手は俺のより少し小さいが、顔に見合わずそれなりにゴツゴツしていた。
The 男の手って感じ。かっこいい。





『ちょっとウソでしょ?何でこんなにお客さんがいるの?次、ウチの劇なのに…』
『それだけ前評判が高いのよ、なんたってあのロミジュリを凌ぐ超ラブロマンスって銘打っちゃったもんねー』

ざわざわ、ガヤガヤと幕越しでも観客の声が聞こえる。

「セリフ無いけど、なんか緊張してきたな…」
『私、今からでも見せ場は派手なアクションシーン!って触れ回って来ようかしら?』
「やめて、園子ちゃんほんとやめて」

蘭ちゃんと園子ちゃんが舞台袖から覗いたときには、客席はほとんど埋まっていた。
やっぱり劇はいつでもどこでも人気らしい。
入り口のほうにニヤニヤしている清水たちを見つけたので、後でシメようと思う。
…あれ、ロミジュリって悲劇じゃなかったっけ…いや一応ラブロマンスだから間違ってないのか…?

『らーんちゃん!』
『あ、和葉ちゃん!』
『やっぱり来てもーてん!平次は「迷惑かけるから行くな」ゆうてんけど…』
『じゃあ服部くん来てないんだ…』

突然蘭ちゃんに関西弁で声をかけてきた私服姿の女の子は、俺の記憶が正しければ服部平次の幼馴染みの子だ。
初対面だから、俺から話しかけはしない。
3人が女子トークを始めたようなので、邪魔しないように何処かへ捌けようと視線をズラすと、こちらへ向かってくる事件吸引機、もといコナンくんと毛利父を見つけた。

そうだった、この学園祭パーになるんだった。
ヤバい、萎える。

『呼んだのボクだけじゃなかったんだね、蘭姉ちゃん…ゴホッ』
『こ、コナンくん!』
『まだ寝てろって言ったのに、約束したから絶対行くって聞かなくてよ』
『カゼ大丈夫?』
『平気だよ…』

コナンくん肌白すぎじゃないか?
ほんとに体調大丈夫かよ。
咳も出てるんだし、今からでも帰って寝て…無理か。

『蘭さんちょっといいですか?ラストのセリフのきっかけですが…』
『あ、はい!』

新出先生、本番ぎりっぎりなのに確認を怠らないとは、真面目だな。

舞台挨拶が済んだらしいコナンくんたちは蘭ちゃんに声をかけて客席へ移動していった。
見送る蘭ちゃんの表情が浮かないようだったけど、どうしたんだろうか。
まさか緊張のしすぎ?

『やば…もう15分前、アンタたちそろそろ着替えないと』
『う、うん…』


『妙地くんサイズ大丈夫?』
『あぁ、大丈夫』

あー緊張してきた…セリフ無いけど。

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