探偵たちと!

□学園祭の準備をする
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夏休みがあけて少ししたある日

『ちゃんと動けそうなのアンタしか居ないの!お願い那前!』

どこぞの錬金術師のように、パン!と両手を合わせてから俺の机の上にバン!と両手を付き頭を下げるは園子ちゃん。
俺もあんまり気にしてないとは言え、君一応財閥のご令嬢よ?
そんなほいほい頭は下げないほうが良いと思うぞ?

「いいか園子ちゃん。俺A組、園子ちゃんたちB組。言いたいことは解るな?」
『あら、B組みんなでA組観に行くって条件で担任と学級委員のOKは貰ってんのよ?あとはアンタが頷くだけ』

そんな裏取引みたいなことしてたのかお前ら。
そして俺は売られていたのか。
初耳だわそんなもん。

「ちょっと面かせや清水」
『えー良いだろ?妙地の当日の休憩時間まとまってんだから、有効に使ってもらわないと!』

どうやら学級委員は取引を解消する気はないらしい。
つまり最初から俺に拒否権はなかった。
園子ちゃんは俺の口からちゃんとOKを貰いたかったらしいが。
園子ちゃんは変なところで真面目だな。

「…はぁ、わかったよやるだけやってみるよ」
『ありがと那前!アンタやっぱり男前ね!真さんには負けるけど!』

パァと顔を輝かせた園子ちゃんは年相応でイヌネコ的な意味で可愛いと思う。
そういえば、真くんが電話で最近園子ちゃんの笑顔が可愛すぎて未だ長時間の直視ができないんですって言ってたのを思い出した。
末永く爆発しろって思った。
でもほんとに爆発したら俺悲しくて泣くわ、やっぱり爆発しないで真くん。
行けたら絶対行くから、結婚式には呼んでくれよ。
俺、この世界じゃ多分生涯独身だと思うから、周りにはちゃっちゃと身を固めて幸せになってほしい。
それが俺の幸せ、なんちって。


『じゃ、頼りにしてるわよ!アンタの“黒衣の騎士のスタントマン”!』




園子ちゃんたち2年B組は『シャッフルロマンス』っていうトランプをモチーフにしたオサレな劇をするらしい。
俺が頼まれたのは、蘭ちゃんが演じるハート姫ってヒロインがチンピラに絡まれてるとき助けに入るスペエドって役のスタントマンだ。
ほんとはスペエドそのものを園子ちゃんがやるはずだったんだが、練習で怪我をして降板になったらしい。
袖口から包帯が見えた。
代役には校医の新出先生が決まったが、先生に無理をさせて怪我なんてさせられないってことでアクションシーンだけは違う生徒に頼むことになった。
蘭ちゃんはヒロインだから、他の生徒のなかでめっちゃ動けて怪我もしなさそうな奴ってことで俺に白羽の矢が立ったわけだ。
スペエドは仮面をしているから、俺のアクションシーンが終わった瞬間に校医の新出先生が代役になったスペエドと入れ替わればバレないこととセリフがないことを理由に、ごり押しされて了承したもののリハーサルの今になって俺はそのことを後悔した。

「え、聞いてないから。ここから飛び降りるとか聞いてないから」
『もう!1回やるって言ったなら腹括んなさい那前!男の子でしょうが!』
『無理言ったみたいでごめんね妙地くん。やっぱり全部僕がやったほうが…』
『だめ!先生が怪我したら大変じゃない!』
「俺と新出先生で対応違いすぎないか園子ちゃん」







分かる人には分かるんだろうか。
そう、近々うちで学園祭がある。
パーになる。
一番楽しめるはずの高二の学園祭なのにパーになる。
でも俺は何がどうなってパーになるのか覚えてないからやっぱり防ぎようがない。
事件かなにかが起こるんだろうが、やっぱりそれ以上の詳細はわからない。


あぁ、困ったなぁ……



『那前、そこはもっとビシッとして!アンタ何のために武術極めてんの?このためでしょうが!』
「いや護身のためだから!?」


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