探偵たちと!

□夏を過ごす
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あれから輪を掛けて何処かのビルが爆発したり、誰かの別荘が爆発したりが起きるようになった。
多分あのふたりが出会ったことで何かしらの化学反応的なアレが起こったのかもしれない。
なんで大々的なニュースにならないのか気になって仕方がない。
それから、優作さんの小説の摸倣犯が現れたり、コナンくんの中の人が誘拐されたりもした。
どれもこれも現場にはあいつらがいるわけだが、周りは「あら、災難でかわいそうにねぇ」で済ませている。
なんで気づけないんだみんな、あいつ自身が災難だってことに。


ああそれと、最近「怪盗KID」なるものが世間を騒がせてる。
こいつのニュースが連日報道されるのに爆破事件は1日で忘れられるのは納得しかねる。
みんなイケメンが好きなのはわかったから…

奴を知ってるには知っていたが、確信できる知識は見た目と声が新一と一緒で魚が嫌いってことぐらいだったと思う。
江古田の空手部に練習試合しに行った折にちらっと見たが、やっぱり新一とクリソツだった気がする。
コナンくん本人が奴を追い詰めて取り逃がした記事を見かけたから、これからもちょくちょくふたりでバトッていくんだろう。
忙しそうだなコナンくんは。



―――――――


俺は高校生探偵、工藤新一。
幼馴染みで同級生の毛利蘭と遊園地に遊びに行ったとき、黒ずくめの男たちのあやしげな取引現場を目撃した。
取引を見るのに夢中になっていた俺は、背後から近づいてくるもう一人の仲間に気づかなかった。
俺はその男に毒薬を飲まされ、目が覚めると、
なんとからだが縮んでしまっていた。
何を言っているかわかんねぇだろうが、んなもん俺が一番わかってねーよバーロー…
で、俺が工藤新一だとバレれば周囲に被害が及ぶだろうという阿笠博士の助言に従い、江戸川コナンと名乗った俺は、探偵を父に持つ蘭の家に小学1年生として居候しながら奴らの情報を探るという、なかなかに忙しい日々を過ごしている。


今日はもう一人の幼馴染みである妙地那前の話をしよう


『ねぇ、コナンくん。那前お兄さんってどうしてあんなに力持ちなのかな?』
『毎日腹一杯食ってるからじゃねーのか?』
『元太くんと一緒にしないでください!那前さんに失礼ですよ』


彼の話題があがっているわけは今から数分前。
今の俺の同級生である3人と学校帰りに博士の家へ向かう途中、見慣れていた銀色の頭を、いつの間にか交流をもっていたこいつらが見つけたからだった。

『あ、那前お兄さんだ!』

歩美の指差すほうをみれば、そこにいるのは確かに那前本人がこちらに向かって歩いてくる姿だった。
いつもリュックひとつの軽装備だった彼は今、遠目からでも重いと分かるほどぱんぱんに膨らんだスーパーのレジ袋を右手に1つ、左手に2つ提げている。
本人の顔に疲労の色はなかった。

『お買い物してたんですかね?』
『すっげー重そうだな』
「那前…兄ちゃんの隣見てみろよ。きっとあのお婆さんたちの買い物袋を持ってるんだ」

那前の隣、というより斜め下で、あいつと談笑しながら一緒に歩いてくる老人が3人。
あの光景の顛末がはっきり思い浮かんだ俺は、律儀に車道側を歩きながらお婆さんたちに歩幅を合わせる那前の相変わらずのお人好しっぷりに、呆れながらもなんだかほっとした。
ここから一番近いスーパーでも、高校生の脚で5分以上は掛かったはずだが。

「それより、早く行かねぇと博士が拗ねて俺たちの分のお菓子食べちまうかもよ?」
『えー!?は、早く行かねぇと!』

久しぶりに那前と話したい気がしないでもなかったが、この小さなおしゃべり自称探偵団に絡まれては流石のあいつも疲れるだろうと、気をきかせて撤収してやった俺は偉い。

『ねぇ、コナンくん。那前お兄さんってどうしてあんなに力持ちなのかな?』
『毎日腹一杯食ってるからじゃねーのか?』
『元太くんと一緒にしないでください!那前さんに失礼ですよ』

「いっぱい運動してるんだって。そのおかげかもよ?」

それっぽいことを言ってみるが、あながち間違いではないだろう。
あいつの場合生まれつきってのもあるか。
あいつの両親はどちらも優しさが滲み出ている顔でほっそりとした人であるというのに、那前は精悍な顔立ちに加え背も高く身体も引き締まった武闘派だ。
つまり何故かどっちにも似ていない。
いや、お人好しなところだけはそっくりか。
幼馴染みながら、まだまだ謎の多いやつである。

「(あ、そういやあいつに服部連れて来やがったことへの文句言ってなかった)」

コナンは今晩那前に電話することを決めた。


――――――



「新一さぁ、それ今言わなきゃいけなかったのか?大分前の話だろ?」
『うっせぇ!俺たちはあいつのせいで色々大変なことになったんだからな!しかも那前、お前あの時服部だけ置いて逃げたらしいじゃねぇか』
「俺は逃げたんじゃなくて服部さんに一任したの!」

なんでか知らんが突然新一から電話がきた。
主な内容は、俺があの日服部平次を連れてきたことへの文句だった。
なんて不寛容な男であろうか。

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